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2020年に期待大。U-20女子W杯出場を決めたヤングなでしこ (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 しかし、延長戦で北朝鮮の猛攻をしのぎ、PK戦を制した日本が優勝を決めた。センターサークル付近で動けなくなってしまったのは、キャプテンの乗松瑠華(浦和レッズL)。「ホッとしたのもあるし、延長、PK戦っていうのが初めてだったんで疲労もありました。前回大会では本当に悔しい想いをした。そこからここで優勝するために2年間過ごしてきた。緊張もすごくあったけど、みんなではねのけて優勝できて本当によかったです」(乗松)

 ピンチの際のみならず、セットプレーのチャンスにも味方に声をかける。誓った雪辱と、背負った責任――キャプテンマークを巻く乗松の覚悟が見えた。

 U-17女子ワールドカップ優勝経験者と、U-19で屈辱を味わった選手たち。対極の経験を味わった選手で構成されていたが、実に上手く融合されており、世代の境目を感じることがなかった。いい意味で、主要選手のみが目立つということがない。トップだけでなく、ボランチやサイドハーフを目まぐるしく変えても、実力を落とすことなく、色を変えることができる選手層の厚さを見た。

 最終ラインをまとめた乗松は群を抜く安定感を見せ、清水梨紗(日テレ・ベレーザ)、北川ひかる(JFAアカデミー福島)ら両サイドバックのビルドアップは攻撃パターンを増加させた。

 さらにタレント豊富なのが攻撃陣だ。U-17世代では押しも押されもせぬエースとして活躍した杉田妃和(INAC神戸)や長谷川だけでなく、鋭い切り込みを見せた西田はサイドハーフ、中央と自在に攻撃に絡むことができ、切り札にはパワー系の清家貴子(浦和レッズL)が控えていた。ボランチの隅田も効果的なプレッシングを見せていたし、この1年でメンタル強化を図ってきたという小林は大会MVPに選出された。

 攻撃陣を自在に組み合わせていた高倉麻子監督は言う。

「(マッチングの部分では)トライしていきたいという気持ちもあったし、決勝でもチームを成長させるためにできるトライはした。選手の良さは引き出してやらないとダメ」

 アジア制覇を目指しながらも、すでに世界大会を視野に入れてチーム作りをした。「どんなチームにしたいのか、どんなプレーをしたいのか」という自発性を常に促した。

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