【プロ野球】優勝がかかった大一番の試合前、近藤貞雄は選手たちを集め「酒でもやって頑張ってくれ」とビールを振る舞った (3ページ目)
レギュラー1年目ということもあり、バントのサインを見間違えることもあった。優勝へのマジック7で迎えた10月7日の甲子園での阪神戦。初回に先頭の田尾が四球で出塁し、2番の平野が三塁ベースコーチのサインを見ると"ヒットエンドラン"。珍しいなと思いながら打ちにいくと、2ラン本塁打になった。だが一塁を回る時、コーチから「バントだぞ」と言われた。
「みんながベンチ前で迎えてくれたんですけど、サインミスしたから素直に喜べずにしぶい顔をしていたら、星野さんに頭をはじかれて『バカヤロー、打ったんだから喜べ!』と言われて......。それ以上に救われたのが、近藤さんの言葉です。『あのサイン間違いのホームランで優勝を確信した。明らかなミスが成功になった。そういうことが起きる時、チームは優勝するんだ』と」
【優勝のかかった大一番の試合前にビール】
優勝の行方は10月18日の最終戦、横浜スタジアムで行なわれる大洋(現・DeNA)戦にかかっていた。勝つか引き分ければ中日が優勝、敗れれば巨人が優勝という大一番。近藤が試合前、食堂にビールを用意させ、選手たちの前でこう言い放った。
「みんな、ここまで来て緊張するなとは言わん。酒でもやって頑張ってくれ」
平野が振り返る。
「小瓶のビールが用意されていてね。それで、『じゃあ飲もうか』と思って1本空けてベンチに戻り、『さあ、やるぞ』となったら、誰も飲んでないんです。『えっ、オレだけ?』って(笑)」
この試合は、セ・リーグ首位打者争いの行方も注目されていた。打率.3501の田尾安志は、打率.351でトップに立つ大洋・長崎慶一(81年から87年まで啓二)を追っていた。しかし、大洋・関根潤三監督は長崎を欠場させ、田尾には5打席連続敬遠。結局、首位打者のタイトルは長崎の手に渡った。その一方で、1番打者がそれだけ出塁した中日は8対0で勝ち、近藤は宙に舞った。
この年、平野は125試合に出場して打率.288、4本塁打、33打点、チーム最多の20盗塁という成績。リーグ最多の14補殺を記録するなど高い守備力も発揮し、ダイヤモンドクラブ賞(現・ゴールデングラブ賞)を受賞。「守走」で生き残った男が、「攻守走」すべてで優勝に貢献した。
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