【プロ野球】「勝負の神様は細部に宿る」 西武・大引啓次コーチがプロに"アマの心"を伝える理由 (3ページ目)
年間143試合で決着をつけるペナントレースでは、微細なプレーが勝敗を分けることも少なくない。派手なファインプレーの裏にも、きめ細やかなプロの気配りが隠されている。
8月11日の西武対楽天戦で、今季のプロ野球全体でも上位に入るような超ファインプレーが生まれた。3回一死二塁、楽天の村林一輝が放ったライト前に落ちそうなライナーに対し、西武のセカンド・滝澤夏央が一直線で背走して追いかけ、ダイビングキャッチでボールをつかみ取ったプレーだ。
この裏には、小さな"好プレー"が2つあった。ひとつ目は、ベンチから大引コーチが送った指示だ。セカンドの滝澤に対し、「そっちに行くよ」と打球の指示を送っていたのだ。ところが、滝澤は気づいていなかった。その指示を一塁手の村田怜音は見ていて、滝澤に「こういう可能性があるぞ」とジェスチャーで伝えていたのだ。
そして、滝澤の超ファインプレーが生まれた。
休養日を挟んだ8月13日、大引コーチは村田にこう話したという。
「『おまえがジェスチャーを送ってくれたおかげで、滝澤が脚光を浴びることができた』と。そう言ったら、なんのことかわかっていない顔で、『あぁ』みたいになっていましたけど(笑)」
些細なことだが、こうした積み重ねが勝利につながると大引コーチは考えている。
「勝負の神様は、細部に宿ると思います。村田がそうやってくれたことで、滝澤が少しポジションを変え、ほんのちょっとだけ意識が一、二塁間にいったのかもしれない。そのプレーがあったから、あの試合は勝てたんですよね。そういう小さな積み重ねで1勝、2勝と拾えていくかもしれないので、今後も続けてほしいですね」
【起こる可能性が低いプレーも徹底】
この滝澤の超ファインプレーは、練習の賜物でもある。ライト前にフラッと落ちる当たりがいつか飛んでくるかもしれないと想定し、大引コーチは普段からノックを打っていたのだ。
「我々は、試合で起こり得るであろうことを練習で潰しておきます。こういうことが起こるかもしれない、と。それが起こらないことのほうが多いかもしれませんけれども、どこかで役に立つかもしれない。その積み重ねだと思うんですよね」
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