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宮西尚生はなぜ真っすぐとスライダーだけで勝負できたのか プロ1年目のキャンプでリリーフで生きていく覚悟を決めた (4ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 大事な場面で納得のいく球を投げても、痛打される。すべてを台無しにするような失敗をしてしまう時がある。そんな時はどう切り替えてきたのだろう。

「毎年リリーフで投げていて、状態がいい日なんて年間に数日しかないんですよ。ほとんどがふつう以下なんです。だから、そのなかでどうパフォーマンスを出せるかが大事なんですけど、そういう状態で打たれると......もう、あきらめるしかないんですよね。

 そこで周りが『そんな気にすんなよ』って言っても、リリーフやった人はわかると思うんですけど、意味ないんですよね。気休めでしかなくて。結局、次の日、登板して抑えることが一番の薬なんですよ。だから、次の登板に向かう精神力っていうのが、リリーフのセンスだと思うんですよ」

 リリーフのセンス──。これまでブルペン史に残る投手たちの取材を続けてきて、初めて耳にする言葉だ。プロ1年目から50登板以上を14年間続け、18年間、一度も先発がない投手の言葉だ。

「ずっと引きずったまま、たまたま抑えて、『やっと回復してきた』というのでは、リリーフとしてのセンスはないんです。次の日、怖くてもマウンドに立ち、闘争心をむき出しにして相手を抑える。そうしたことができるセンスを持ったピッチャーこそ、リリーフの適性があると思います」

(文中敬称略)

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宮西尚生(みやにし・なおき)/1985年6月2日生まれ。兵庫県出身。市尼崎高から関西学院大を経て、2007年大学・社会人ドラフト3位で日本ハムに入団。プロ入り1年目から14年連続50試合以上登板を果たすなど、チームに欠かせない戦力として活躍。16年には史上2人目の200ホールドを達成。24年には前人未到の400ホールドを記録し、25年5月15日のオリックス戦では880試合連続救援登板の日本記録を達成。また9月23日の楽天戦で史上4人目の通算900登板を達成した。

著者プロフィール

  • 高橋安幸

    高橋安幸 (たかはし・やすゆき)

    1965年、新潟県生まれ。 ベースボールライター。 日本大学芸術学部卒業。 出版社勤務を経てフリーランスとなり、雑誌「野球小僧」(現「野球太郎」)の創刊に参加。 主に昭和から平成にかけてのプロ野球をテーマとして精力的に取材・執筆する。 著書に『増補改訂版 伝説のプロ野球選手に会いに行く 球界黎明期編』(廣済堂文庫)、『根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男』(集英社文庫)など

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