宮西尚生はなぜ真っすぐとスライダーだけで勝負できたのか プロ1年目のキャンプでリリーフで生きていく覚悟を決めた (3ページ目)
「リリーフは打たれれば"戦犯"、抑えても"当たり前"。この厳しいなかで、いかに自分のメンタルをコントロールするかと言ったら、打たれるにしても納得できる球を投げること。でないとチームに申し訳ないし、"勝ち"で投げていくうちに責任を強く感じるようになって。勝負球だけじゃない、全球、1球たりとも気を抜いて投げない。そこがすごく大事やなって感じたんです」
ほかの球種を投げて打たれ、落ち込んでいる時、後ろで守っている先輩野手のひとりに後押しされた。「逆球でも真っすぐとスライダーで押し込むのがおまえのスタイルだろ」と言われたのだった。「その時にもうスライダーが通用せんってなるまでこれ一本でいこう、って腹に決めたんです」と言って宮西は笑うが、それでも抑えきれるものなのだろうか。
「やっぱりしんどかったですよ。その日、スライダーがダメだったら真っすぐしかないんで。だけど、『おまえの攻めてる姿勢が、うしろで守っている野手らはすごいと思ってるし、おまえがそれで打たれるんやったら、それはそれで納得できる。だから弱腰じゃないけど、逃げたような球を見せるな』って先輩に言われて。十何年、スライダー一本で行きました」
【状態がいい日なんて年間に数日しかない】
2023年にチェンジアップを完全習得するまで15年間、真っすぐとスライダーだった宮西。カブレラに打たれた当時のチェンジアップは外角に逃げるような球で、簡単に遠くに飛ばされたことだけが記憶に残る。ほかのことははっきり覚えていないという。
「ちゃんと自信持って投げた球が打たれた。これは自分の力不足なんで納得もできるし、また練習すればいいってなるけど、かわそうとした球で打たれると、『なんだ、真っすぐかスライダーを放っておけばよかった』って、ずっと心に引っかかっちゃうんですね。
で、リリーフは次の日も登板があります。だからいかにメンタルを平常に戻せるかがすべてだと思うので、引っかかったままではやっていけない。そういうところで、納得いく球を永遠に磨き続けるというのが、ここまでの自分のスタイルです」
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