梶谷隆幸が高森勇旗に明かす巨人移籍の真相 「ベイスターズひと筋で終わったほうが美しいとは思うんだけど...」
梶谷隆幸×高森勇旗 ベイスターズ同期入団対談(全4回/4回目)
2020年オフ、梶谷隆幸氏はFA権を行使し、長年プレーしたベイスターズを離れてジャイアンツへの移籍を決断した。かつてのチームメイト・高森勇旗氏に明かしたFA移籍の真実。その選択の裏にあったのは、「安定よりも変化を選びたい」という強い意志と、最後まで戦う覚悟だった。
引退後、久しぶりに顔を合わせた高森勇旗氏(写真左)と梶谷隆幸氏 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る
【ベイスターズが強くなった理由】
高森 現役中はカジ(梶谷)が活躍すると、「くそっ! オレだって」という気持ちになったけど、2012年に引退してからは、心から応援できるようになったんだ。DeNAになってからベイスターズは、カジやゴウ(筒香嘉智)が中心選手になって、どんどん強くなっていくんだけど、なんで勝てるようになったと思う?
梶谷 うーん、空気かな。オレは小学校、中学校ってずっと弱いチームだったんだよね。だけど開星高校(島根)に入って、初めて自分の力じゃないのに勝てることを知った。気がついたら、当たり前のように勝つんだよ。その時にわかったことは、"勝ちグセ"というものがあるということ。その一方で、"負けグセ"もある。オレらが若手の頃、ベイスターズの一軍には村田(修一)さんや内川(聖一)さんというすばらしい選手がいたのに勝てなかった。「なんで?」って考えても、明確な理由はない。勝てない時というのは、そういう空気になってしまう。
高森 選手個々の力は、決して劣っていたわけじゃない。
梶谷 ベイスターズが勝ち出した頃、一番大きかったのは「オレたちいけるんじゃないか」って空気が無意識のうちにできたこと。もちろん、選手それぞれの技術も上がったんだけど、「勝てるでしょ」という空気だよね。言い方は悪いけど、5点差あっても「誰かが打つでしょ」って思えてしまう。そうした余裕が大きかったと思う。
高森 村田さんが2011年のオフにジャイアンツにFAで移籍し、プレースタイルが大きく変わったでしょ。構えが小さくなって、右方向にしか打たない。「どうしたんやろう?」って思っていた時に聞いたんだけど、「ジャイアンツは勝つことが当たり前だから、選手はチームの勝利のために必死でプレーする。とにかく負けたら居心地が悪いんだ。3連敗なんてありえない。異常事態だよ」って。
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著者プロフィール
村瀬秀信 (むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ。神奈川県出身。茅ケ崎西浜高校野球部卒。主な著書に『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』、『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』、『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』など。近著に『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』がある。