かつての鈴木誠也を彷彿とさせる練習量とスイングスピード カープ3年目の内田湘大に期待したくなるワケ
沖縄の青空に、白球が美しい放物線を描いた。広島3年目の内田湘大(しょうだい)が、自主トレ期間の1月、バックスクリーン右へ豪快な一発を放った。中堅122メートルのフェンスを越えるその打球は、たしかな成長を感じさせるものだった。
1月5日から始まったカブス・鈴木誠也らとの自主トレを経て、内田はさらなる進化を遂げた。そして同23日、広島に帰ってきた直後に、自身初となる一軍キャンプスタートが球団から発表された。「勝負の1年」と位置づけるシーズンが幕を開けた。
昨季最終戦でプロ初安打をマークした内田湘大 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【昨季最終戦で待望のプロ初安打】
内田は2022年秋、就任した新井貴浩監督のもと新体制で臨んだドラフトで、利根商(群馬)から広島の2位指名を受け、プロ入りを果たした。
1年目のウエスタン・リーグでは87試合に出場し、打率.163、0本塁打、22打点と苦しんだが、2年目の昨季は106試合で打率.232、4本塁打、31打点と成績を向上させた。だが、本人はまだ納得していない。
入団と同時期に広島の二軍打撃コーチに就任した新井良太コーチの指導を受けながら、内田はプロの世界での成長を模索し続けた。オフにはチームメートの紹介で目標とする鈴木誠也に弟子入り。スイングの力強さは増し、飛距離も着実に伸びていった。
迎えた昨年10月5日、内田は一軍デビューを果たした。シーズン最終戦となったヤクルト戦で「7番・三塁」として先発出場。3回の第1打席では山野太一の内角球を引っ張り、レフト前にプロ初安打を放った。思い切りバットを振り抜いたあと、足元を滑らせながらも懸命に一塁へ駆ける姿は、がむしゃらにプロ生活を送ってきた彼のひたむきな姿勢を象徴していた。
ルーキーイヤーの2023年は、とにかく実力不足を痛感する日々だった。二軍の本拠地・由宇で試合がある日は、夕食後も寮に隣接する室内練習場でバットを振り続けた。納得するまでスイングを繰り返し、気づけば日付が変わっていることもあった。疲労が抜けきらないまま翌日の試合に臨むこともあったが、それすら気にならないほど必死だった。
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著者プロフィール
前原 淳 (まえはら・じゅん)
1980年7月20日、福岡県生まれ。東福岡高から九州産業大卒業後、都内の編集プロダクションへて、07年広島県のスポーツ雑誌社に入社。広島東洋カープを中心に取材活動を行い、14年からフリーとなる。15年シーズンから日刊スポーツ・広島担当として広島東洋カープを取材。球団25年ぶり優勝から3連覇、黒田博樹の日米通算200勝や新井貴浩の2000安打を現場で取材した。雑誌社を含め、広島取材歴17年目も、常に新たな視点を心がけて足を使って情報を集める。トップアスリートが魅せる技や一瞬のひらめき、心の機微に迫り、グラウンドのリアルを追い求める