田中将大の楽天退団はなぜ起きた? 元球団フロント・小林至が解説「お金の問題ではなく......」 (3ページ目)
── 生活費には一生困りませんね。ちなみに、イチロー選手や松井秀喜選手のメジャー最終年俸は推定でどのぐらいだったのでしょうか。
小林 イチローは2019年75万ドル(当時約8175万円)、松井秀喜は2012年90万ドル(当時約9000万円)でした。
── メジャーはシビアですね。日本はプロといっても、やはり情実的なんですね。
小林 ファンあってのプロ野球ですから、浪花節を求めるのであれば、その感情を踏まえないといけません。日本では、落合博満さんが現役時代に「プロ野球選手と球団というのは契約関係であり、私の能力をいくらで買うのかという話だ」と公言していました。それは中日の監督時も一貫していたと思います。しかし、そうした合理的な考えはアメリカ的であり、日本には馴染まないという考える人が多いように思います。
── 今回の田中投手の一件を、小林さんはどのように感じましたか。
小林 お金の問題ではなく、気持ちの問題だと思います。先述したように、田中はこれまで多くの報酬を得ています。自らに委ねられると考えていた進退がそうではなかったということで、気を悪くしたところがあったのでしょう。球団に貢献してきたという自負があり、あと3勝に迫っている通算200勝も楽天で達成したかったと思います。ただ、球団経営やプロ選手であることを考えれば、すべて思いどおりにいかないことはある。すなわち、「球団経営の合理性」と「選手としての誇り」との間に生じた摩擦が生んだ結果だと思います。
小林至(こばやし・いたる)/1968年生まれ、神奈川県出身。1991年、千葉ロッテマリーンズにドラフト8位指名で入団。94年から7年間米国在住、コロンビア大学でMBA取得。2002〜20年、江戸川大学(助教授/教授)、2005〜14年、福岡ソフトバンクホークス取締役を兼任。パ・リーグの共同事業会社「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げや、球界初「三軍制」の導入等に尽力した。立命館大学、サイバー大学で客員教授。大学スポーツ協会(UNIVAS)理事、株式会社ホームクリエイト顧問を歴任。現在は桜美林大学教授博士(スポーツ科学)/一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会会長。近著『野球の経済学』(新星出版)など著書、論文多数。
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