田中将大の楽天退団はなぜ起きた? 元球団フロント・小林至が解説「お金の問題ではなく......」 (2ページ目)
【選手と球団の関係は雇用ではなく請負】
── 実力主義のプロゆえに「力が衰えたら年俸は下がるのは必然」という一方で、ファンやマスコミは「チームの功労者なのに......」という意見があります。
小林 選手と球団の関係は雇用ではなく、請負の契約です。楽天は野球協約に基づき、「この金額であれば契約します。それが嫌ならマーケットに出ても構いません」という、それだけのことです。これがMLBをはじめ、プロスポーツの選手契約のグローバルスタンダードです。
ところが、日本はそこに情が入るのでややこしくなります。球団サイドも「功労者に冷たい」と思われたくない。だからといって、実力に見合わない年俸を払えば、公平性を損なうことになり、中堅・若手選手のやる気を削ぐことになる。年俸を提示する球団フロントは大変だと思います。私も球団フロント時代、特にベテランのスター選手との契約には頭を悩ませました。
── このオフ、田中投手以外にも、通算186勝の石川雅規投手(ヤクルト)にしても年俸6750万円から4000万円にダウン。ソフトバンクの和田毅投手は引退しました。
小林 今回の田中に限らず、どの選手も衰えて大幅に年俸が下がるのを受け入れるか、それとも引退するのか、どちらかを選択する時期が来るのです。
── NPBとMLBの年俸はどのぐらい違うのですか。
小林 NPBは外国人選手と非会員選手を除く日本人支配下選手の平均年俸は4713万円(日本プロ野球選手会調べ)です。一方、MLBはメジャー契約選手(マイナーは除く)の平均年俸は約6億円です。
【お金の問題ではなく気持ちの問題】
── 田中投手のこれまでの推定総年俸はどのくらいなのでしょうか。
小林 メジャーに行くまでの楽天在籍時(2007〜13年)の総年俸は、約12億7000万円。楽天復帰後(2021〜24年)の総年俸は、約25億3500万円。これらを合計すると、NPBでの総額は約38億円になります。それにヤンキース在籍時(2014〜20年)は、約186億円の契約を結びました。NPBとMLBの総年俸を合計すると、約224億円となります(参考MLB Players Navi)。税金で半分取られるとしても、少なくとも100億円以上は手元に残る。
たとえば、米国債など年利3%程度の堅実な運用でも、年間3億円の金融所得を得ることが可能です。さらに、62歳以降にはMLB在籍7年に伴う選手年金として、毎年14万ドルを受け取ることができます。
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