【プレミア12】早川隆久は発想を変えてキャリアハイ 分析能力を武器に外国人打者とどう対峙する? (4ページ目)
【一番の武器は分析能力】
じつは、早川がボールの回転軸を頭で描けるようになり始めたのは、去年の冬だという。つまり横変化のスライダーを身につけるために、トラックマンやラプソードを活用したことでピッチング全体の理解度が劇的に増したのだ。
ダルビッシュ有(パドレス)も行なっているが、回転軸のイメージを持てればスライダーはある程度意図したように変化させられる。ゆえに早川は、「結果として縦スラも習得できた」というわけだ。
そうしてリーグトップクラスの成績を残した今、聞きたいことがあった。木更津総合高時代から注目されていた早川だが、プロ志望届は出さずに早稲田大学に進んだ理由をプロ1年目に尋ねると、「自分にはずば抜けた武器がなかった」からと話した。では今、最大の武器はなんだろうか。
「まあ、またそこもルーキーイヤーと変わったんですけど......」
7秒間考えたのちにそう言うと、自身の変化を続けた。
「ルーキーイヤーは『155キロ左腕』という形でプロに入ってきて、スピードはある程度自信がありましたけど、今はそういうのではなくて、どっちかと言うと、分析能力が自分の持ち味かなと思っていて。今年はその分析をちょっと多めにというか、深掘りしたら、ある程度抑えられるようになりました。アンテナもそうですし、俯瞰的に見られることが一番だと思います」
速い球を投げる才能に加え、自分自身を客観的に分析して投球術を磨いた。そうして今季の飛躍につなげたわけだ。
日本代表として臨むプレミア12は、昨年のアジアチャンピオンシップに続く国際舞台となる。今後のキャリアにおいて、どのように位置づけているのか。
「国際大会は高校からずっと投げさせてもらい、いろいろな経験をさせてもらってきました。去年はアジアという舞台で、今年は世界大会。中南米のチームも相当力をつけてきていると思いますし、そういう相手を抑えることによって来年以降の(ペナントレースで)外国人に対しての抑え方も変わってくると思います。そこが自分のなかでは通過点というか、抑えないといけないバッター陣かなと思っています」
学生時代から陽の当たる道を歩き、日本を代表する左腕のひとりになった。プレミア12では世界の強豪にどう立ち向かうのか。極上の投球術を堪能したい。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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