ヤクルト奥川恭伸が目指す最強の投球術 「奥行きのあるピッチングってなんだ?」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

「いつもだったらスライダーを投げるところですが、真っすぐを課題にしていたので、無理やり投げたという感はありました。初球がいいファウルの取り方だったので、そのあと変化球で2球ボールにしてしまったのがもったいなかった。そこはミスといえばミスです。ああいう場面で真っすぐを投げて、バッターが捉えられないような質を目指していきたいです」

 注目したのは、ホームランを打たれた直後の石塚綜一郎への初球だった。投じた真っすぐは、この日の最速となる148キロをマーク。見逃しストライクとなった。

「打たれたあとに変化球で逃げるのはよくないので、真っすぐでいくという姿勢じゃないですけど......やっぱりキャッチャーも真っすぐのサインを出しづらくなるので、『いけるぞ』という意味も込めて、初球の真っすぐに力を入れました。今日は真っすぐの平均球速もまずまず出ていたみたいなので、次の登板では今日の試合よりもいい内容にしたい。ちょっとつかみかけている感じなので、しっかりつかみ切りたいなと思っています」

【奥行きのあるピッチング】

 フェニックスリーグ期間中は、真っすぐの質にこだわり練習を続けてきた。

「僕も試合では打席に立つので、いろいろなピッチャーのボールを見ますけど、それぞれ質が違いますね。150キロ後半と、数字どおりの速いピッチャーもいれば、ボールははっきり見えているのに、スイングしたらもうキャッチャーのミットに収まっていて『なんですか、それ』みたいなピッチャーもいます」

 いま追い求めている質については、しばらく考え込んでから「ボールの"イキ"というか、奥行きですかね」と、独特の感性を持つ奥川ならではの表現で語ってくれた。

「数字には出ないんですけど、奥行きをうまく使ったピッチングがしたい。そのために手前というか、僕から見たら奥ですよね。バッターのミートポイントを、どれだけ奥に持っていけるか。奥が広がれば前も広がるので、変化球もうまくいきます。ミートポイントが奥にあれば『差されているな』となって、『もっと手前で打ちたい』となったところに変化球がくる」

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