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「高校野球は入口」 大阪桐蔭・西谷浩一監督目指す、選手たちの人生を見据えた育成とは

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu

大阪桐蔭のリアル(前編)

 大阪桐蔭出身者の活躍が目覚ましい。現在18人の選手と3人のコーチが籍を置くNPBでは、2000本安打到達を間近に控えた浅村栄斗(楽天)をはじめ、松尾汐恩(DeNA)、藤原恭大(ロッテ)、泉口友汰(巨人)といった若手選手も台頭し存在感を示している。

 また、東京六大学野球で1年生ながら境亮陽(法政大)が首位打者争いをし、5月5日の早稲田大対立教大戦では徳丸快晴(早稲田大)、村本勇海、丸山一喜(ともに立教大)が本塁打を放つなど、プロアマ問わずそれぞれのステージで力を発揮している。

 そして今年のチームも選抜大会こそ逃したものの、今春の大阪大会を制するなど逆襲の兆しを見せており、森陽樹と中野大虎の両右腕はドラフト候補に挙がり、侍ジャパンU−18代表候補にも選出された。

活気あふれる大阪桐蔭の練習風景 photo by Takagi Yu活気あふれる大阪桐蔭の練習風景 photo by Takagi Yuこの記事に関連する写真を見る

【部員は1学年20人まで】

 そんな平成と令和の高校野球を代表する強豪校は、いかにして選手たちを育成・強化しているのか。

「一生懸命やる子、上を目指してやっている子が多い。そういう環境に身を置いて、みんなそれぞれが野球だけでなく、社会に出て通用するような心の部分を育てる。そういう風土はあると思います」

 大阪桐蔭の魅力を言葉にすると何なのかを尋ねると、歴代トップとなる甲子園通算70勝の名将・西谷浩一監督はそう答えた。多くの指導者が口にする当たり前のことかもしれないが、それでもその言葉を体現している高校は、はたして全国でどれだけあるのだろうか。

 大阪桐蔭のグラウンドは活気に満ちていた。シートノックひとつとってみても、全国から集まった選手たちの高い精度が光るプレーだけでなく、絶え間なく飛び交う声や真剣な眼差しが、すべての部員に見られる。その熱は、走者役の選手も同様で、少しでも先の塁を狙おうとするその姿勢は果敢であり、時には獰猛とも言えるほどだ。

 この密度の濃さは、部員数にも要因があるだろう。大阪桐蔭では1学年20人までと上限を決めている。

「これ以上いても補欠が増えてしまうだけ。しっかり責任を持って預かり、みんなが練習、試合ができる人数にしています」

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著者プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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