検索

「高校野球は入口」 大阪桐蔭・西谷浩一監督目指す、選手たちの人生を見据えた育成とは (2ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu

 西谷監督がそう話すように、全員がひたむきに取り組む環境とスタッフが揃う。

 取材当日も控え選手たち中心の「育成試合」と呼ばれる練習試合が別の場所で取り組まれており、日によっては場所をはしごして2試合行なうこともあるというほど、実戦の機会が与えられている。

今春の大阪大会でベンチ入りを果たした3年生の佐井川湧牙 photo by Takagi Yu今春の大阪大会でベンチ入りを果たした3年生の佐井川湧牙 photo by Takagi Yuこの記事に関連する写真を見る

【練習から試合と同じ緊張感】

 全員の熱量が高いからこそ、たとえ故障や不振に苦しんでいたとしても、士気が下がることはないと、選手たちは口を揃えて証言する。

 昨年6月、走者を務めていた際に左肩を脱臼した3年生左腕・佐井川湧牙は、「主将の中野(大虎)が引っ張ってくれているので、熱量の差はないと思います」と語る。その言葉どおり、仲間たちから刺激を受けながらリハビリと鍛錬を重ね、今春ついに初めてベンチ入りを果たした。大阪大会でも好投を見せ、強力な投手陣の一角を担う存在へと成長を遂げた。

 さらに教育実習中で母校に帰ってきていた関戸康介(日体大4年)にも話を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「常に厳しい声をかけ合える仲間がいて、練習から試合と同じ緊張感がありました。ケガも多かったですが、辞めたいと思ったことは一度もありません」

 また関戸は「西谷さんは本当に偉大です。これは今も当時も思っています。みんなをうまくさせたいという気持ちが伝わる監督です」と、指揮官への全幅の信頼も語った。

 有望な球児たちが、数多くの誘いのなかから大阪桐蔭を選ぶのは、このような環境や空気感が、彼らの向上心を強く刺激するからだ。井端弘和監督率いる侍ジャパンU−15代表の一員として、ワールドカップ初優勝を経験した今井幹太朗、中島齊志、川本晴大、岡田良太の4選手や、西武・中村剛也を父に持つ中村勇斗など、今年も全国各地から逸材が集結した。

【全員が同志であるという認識】

 それぞれが高い目標と意識を持って入学し、互いに切磋琢磨してきた選手たちの卒業後の活躍は、冒頭で述べたように、プロ野球の世界だけにとどまらない。

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る