【F1】角田裕毅の10位入賞はVSCの幸運だけじゃない 予選5位のアロンソを抑え込んだ絶妙な駆け引き
F1第7戦エミリア・ロマーニャGPレビュー(後編)
第7戦エミリア・ロマーニャGP、決勝前日──。
レッドブルのガレージでは、土曜の深夜1時まで角田裕毅のマシンの修復作業が行なわれ、スペアモノコックにはさまざまなパーツや新品のパワーユニットが組みつけられ、実質的に新たなマシンが組み上げられた。
「(すべて組み上げて)ファイヤーアップ(※)を終えたのが12時半か1時頃でしたかね。そのあと、我々のPU(パワーユニット)側はいつもどおりでしたが、車体側はそこからセットアップ作業がありますから、まだ作業は残っていたと思います。夜遅くまでやって、日曜の朝はいつもどおりの時間(フォーメーションラップ5時間前)に始めました」
※ファイヤーアップ=ニューマシンのモノコックを仮組みしたのち、パワーユニットを搭載して初めて動作確認する作業。
角田裕毅はピットレーンスタートから10位を掴み取った photo by BOOZYこの記事に関連する写真を見る HRC(ホンダ・レーシング)の現場運営を統括する折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、土曜夜の作業をこう振り返る。
マシンだけでなく、パワーユニットのダメージも見た目からして大きく、詳細なチェックを行なわずにそのまま決勝で使用することはできない。ホンダとしては今季3基目のパワーユニットを投入して、来週・再来週にも続く3連戦も含めたやりくりに備えることを決めた。
角田はピットレーンからハードタイヤを履いてスタート。集団の最後方を粘り強く走った。
ハードタイヤを保たせながら走り、早めのピットインをしたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を抑えてマックス・フェルスタッペンをアシストすることも忘れなかった。
そして29周目、エステバン・オコン(ハース)がコースサイドにマシンを止めたことでVSC(バーチャルセーフティカー)が出され、角田はここでタイヤ交換を済ませたことによって約10秒をゲイン。これで実質11位にポジションを上げる幸運に恵まれた。
さらにセーフティカーが入り、54周目のリスタートと同時に、角田は前のニコ・ヒュルケンベルグ(ステーク)に攻勢を仕掛けた。ターン7の立ち上がりからターン9でプレッシャーをかけていき、ブロックラインでミスをしたヒュルケンベルグを抜いて10位へ。
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著者プロフィール
米家峰起 (よねや・みねおき)
F1解説者。 1981年1月31日生まれ、兵庫県出身。F1雑誌の編集者からフリーランスとなり2009年にF1全戦取材を開始、F1取材歴14年。各種媒体に執筆、フジテレビNEXTやYouTube『F1LIFE channel』での解説を務める。