奥村展征「必要とされる選手になりたかった」 愛された元ヤクルトのムードメーカーが明るさの裏側で持ち続けた危機感 (5ページ目)
【楽天からの思いもよらぬオファー】
シーズンが終わると、各球団から来季の契約についてのリリースがある。ヤクルトからは10月2日に、来季の契約を結ばなかった7選手の発表があった。そこに奥村の名前はなかった。
「勝手に山を越えたかなと思って、来年はやり返さないとな、という気持ちになっていたのは事実です」
しかし、来季に向けて気持ちを切り替えたのも束の間、10月30日に球団事務所に呼ばれ、戦力外を言い渡された。
できることなら現役を続けたいという気持ちはあった。しかし、シーズン終盤にハムストリングスの肉離れをし、ケガを押して試合に出場していたこともあって、合同トライアウトの参加は見送り、他球団から声がかかるのを待った。
楽天から電話がかかってきたのは、戦力外が発表された数日後のことだった。
「電話をいただいた時は、当然、選手としてかなと思いました。その時はそれを待っていたので」
だが、その電話は思いもよらないオファーだった。これが、第二の野球人生の始まりになった。
選手たちの指導に当たる奥村
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【プロフィール】
奥村展征 おくむら・のぶゆき
1995年、滋賀県生まれ。日大山形高3年夏には主将として甲子園に出場し、山形県勢初のベスト4に貢献。ドラフト会議で読売ジャイアンツから4位指名を受け、2014年からプロ野球選手生活をスタートすると、翌2015年には東京ヤクルトスワローズへ移籍。ヤクルトのムードメーカーとしてファンに親しまれるも、2023年に戦力外通告を受け、現役引退。2024年から東北楽天ゴールデンイーグルスで、二軍内野守備走塁コーチを務めている。
著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。
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