奥村展征「必要とされる選手になりたかった」 愛された元ヤクルトのムードメーカーが明るさの裏側で持ち続けた危機感 (4ページ目)
【戦力外覚悟の土壇場で見せた意地】
課題としていた打撃のほうは、シーズン初打席でヒットを放ち、同じ日に犠牲フライで打点もあげた。
しかし、5月17日の巨人戦で空振り三振を喫したのを最後に、奥村が一軍のバッターボックスに立つことはなかった。4打数2安打と少ない出番できっちり仕事をしたように思えたが、5月31日に再びファーム行きを言い渡された。
「それまでにチャンスは何回ももらっていたのに、それを活かせなかった。仕方がなかったのかなと思います」
ファームでは打率がなかなか2割に届かず、打撃不振に陥った。「ヤンスワ(ヤングスワローズ)」と呼ばれる若手の活躍もあって、その後は結局、一軍に呼ばれることがなかった。
「気持ちの面が難しかったですね。ファームでも当然チームが勝つために力を注ぐんですけど、自分のやるべきことがなかなかうまくできなかった。結果が出ずに苦しいシーズンになりました。プロ10年目、ファームで2割の成績では(戦力外になるのは)仕方ないことだなと感じていました。2022年は一軍にほぼ1年間いさせてもらったのに、去年は二軍生活が長く続いたので特にそう思いました。自分自身が不甲斐なかったです」
10年ぶりに好きだという東北の地に戻ってきた
しかしながら、戦力外になるのを覚悟したシーズン終盤、土壇場で奥村は意地を見せる。奇しくものちにコーチを務めることになるファームの楽天戦だった。
1対3の2点ビハインドで迎えた7回裏、ノーアウト一塁・三塁のチャンスで奥村に出番が回ってきた。そして、初球をライトスタンドに叩き込み、逆転スリーランホームランを放った。これが、一軍、二軍通じてのシーズン第1号だった。
「たぶんその時にはもう感じていたんでしょうね。当然毎日の練習の積み重ねがあったからだとは思うんですけど、気持ち的にも、来年は戦力になれないかもしれないって考えた時に吹っ切れたのはあったのかもしれません。結果論ですけどね。でも、結果が残らないよりはよかった」
その後にも、もう1本ホームランを放つなど、土壇場で見せ場をつくった。
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