DeNA小園健太はなぜスイーパーを習得しようとしているのか? きっかけは細川成也に打たれたタイムリー (4ページ目)
東野コーチの横滑りするスライダーは独特だ。通常、スライダーの握りは、人差し指と中指をくっつけるものなのだが、東野コーチは、その2本の指を離した状態で、ボールの縫い目を滑らすように投げていたという。
「これまでいろんな選手に教えてきたんですけど、ボールがほどけてしまうというか、抜けてしまうことが多いんです。けど小園は器用なタイプで、教えたら初球から投げられました。しっかり腕を縦振りして、チョップするように投げてみなさいって。要は曲げるのではなく、"切る"イメージですね」
ボールの質は日に日によくなっていき、ファームでの試合でも投げ、小園はもちろん東野コーチも手応えを感じている。
スイーパーの定義は「128キロ以上の球速で、25センチ以上横に曲がり、10センチ以上沈まない」というものだが、小園はこの数字をほぼクリアしているという。今後どこまで精度を上げ、大きな武器となっていくのか注目だ。
ただ、あくまでも東野コーチも声を大にして言うが「軸はストレート」である。小園は、決意するような口調で語る。
「『ストレートをゾーン内で強く』というのは絶対ですし、そこにはこだわっていきたい。変化球は、ストレートを待っていても差すという反応をさせたいので、目線を変えるためにもバッターの頭にない変化球を、意外なタイミングで投げるなど、引き出しを増やして工夫していきたいと思います」
ストレートありきの変化球ではあるが、一方で変化球ありきのストレートでもある。待ち望む2度目の一軍登板に向け、小園の研鑽は果てることなく続いていく──。
小園健太(こぞの・けんた)/2003年4月9日、大阪府生まれ。市和歌山高から2021年ドラフト1位で横浜DeNAベイスターズから指名を受け入団。背番号はかつて三浦大輔監督がつけていた「18」を託された。1年目は体力強化に励み、2年目は一軍デビューこそなかったが、ファームで17試合に登板。最速152キロのストレートにカーブ、スライダー、カットボール、チェンジアップなどの変化球も多彩で、高校時代から投球術を高く評価されている。
著者プロフィール
石塚 隆 (いしづか・たかし)
1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住
フォトギャラリーを見る
4 / 4