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阪神タイガース史上最大のミステリー プロ野球経験のない謎の老人監督・岸一郎の正体 (4ページ目)

  • 村瀬秀信●文 text by Murase Hidenobu

 さらに吉田義男、三宅秀史の三遊間も完成し、この7年後1962年の"守り勝つタイガース"への足がかりをつかんだという功績も忘れてはならない。そしてタイガースの本流からすれば青天の霹靂のようなこの監督人事が、その後の"お家騒動"が続くタイガースの球団体質の発火点ともいうべき大きな影響を与えていることも、だ。
 
 昨年38年ぶりの日本一をつかんだ岡田彰布監督とて、シーズンの連敗中は厳しい声に晒された。歴代37代はプロ野球最多、タイガースの監督という特異すぎる職業を思えば、やはりプロ野球はスタンドから見るぐらいがちょうどいい。

プロ野球経験ゼロのジイさんが、なぜタイガースの監督に!?
“猛虎史最大のミステリー”に迫る傑作エンタメ・ノンフィクション書籍
『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』
村瀬秀信・著

1980円(税込)

2024年2月5日発売

2023年に18年ぶりの優勝を果たし、沸き立つ阪神タイガース。 そのタイガースの歴史上、「最大のミステリー」とされる人物がいる。

第8代監督・岸一郎。

1955 (昭和30) 年シーズン、プロ野球経験ゼロの還暦を過ぎたおじいさんが、突然、タイガースの一軍監督に大抜擢されてしまったのだ。 「なんでやねん?」 「じいさん、あんた誰やねん?」 困惑するファンを尻目に、ニコニコ顔で就任会見に臨んだ岸一郎。 一説には、「私をタイガースの監督に使ってみませんか」と、手紙で独自のチーム改革案をオーナーに売り込んだともいわれる。

そんな老人監督を待ち構えていたのは、迷走しがちなフロント陣と、ミスタータイガース・藤村富美男に代表される歴戦の猛虎たち。メンツを潰された球団のレジェンド、前監督の松木謙治郎も怒りを隠さない。

不穏な空気がチームに充満するなかで始まったペナントレース。 素人のふるう采配と身勝手に振る舞う選手たちは互いに相容れず、開幕後、あっという間にタイガースは大混乱に陥っていく……。

ファンでも知る人は少なく、球史でも触れられることのないこの出来事が単なる“昭和の珍事”では終わらず、タイガースの悪しき伝統である“お家騒動体質”が始まったきっかけとされるのは、なぜなのか? そもそも岸一郎とは何者で、どこから現れ、どこへ消えていったのか?

満洲─大阪─敦賀。ゆかりの地に残された、わずかな痕跡。吉田義男、小山正明、広岡達朗ら当時を知る野球人たちの貴重な証言。 没年すら不詳という老人監督のルーツを辿り、行方を追うことで、日本野球の近代史と愛憎渦巻く阪神タイガースの特異な本質に迫る!

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