山田久志が清原和博を「痛めつけていた」理由 一方で松永浩美は、阪急の大エースに「頭突き事件」を起こしていた (3ページ目)
【酔って記憶をなくし、山田にまさかの頭突き】
――山田さんとの試合以外のエピソードで、印象に残っていることはありますか?
松永 1984年、阪急の優勝が早々と決まったので、球団からのお祝いで有馬温泉に一泊で旅行に行ったんです。私はお酒が進んで記憶がなくなるくらい酔っ払ってしまって......。後で聞いた話だと、山田さんにビールを注ぎに行った時に、山田さんの髪の毛を両手でつかんで「何が日本のエースだ! 大事な試合で7点とられて、このやろう!」と言いながら、何回か頭突きをしていたらしいんです。
――それは壮絶な場面ですね......。その大事な試合というのは?
松永 優勝が近づいていた時期で、勝てばマジックが6から4に減らせる試合で山田さんが先発したんです。そうしたら初回に7点を取られてKOされ、負けてしまったんですよ。山田さんがKOされるなんて想像したこともなかったので、かなり戸惑いました。「天下の山田が、なぜこんな打たれ方をしてしまったのか」となったんだとは思いますが、それが酔った勢いで、変な形で爆発してしまって......。
――当然、怒られましたよね?
松永 翌朝、朝食の会場で山田さんに「俺に近づくな」と言われたんですが、記憶がない自分は「えっ、なんでだろう」と思うじゃないですか。その30分後くらいに住友平さん、天保義夫さんらコーチ陣に呼ばれて、「マツは昨日の夜の出来事を覚えてるか?」と聞かれました。覚えてないことを伝えたら、「お前、山田に頭突きしたらしいぞ」と言われました。二日酔いが一気に冷めましたよ。
それで「これは絶対に怒られる」と思ったら、その2人には褒められたんです。「やったこと自体はよくないと思うけど、若いマツがエースの山田にあそこまで言えるのはすごいことや。それだけお前も成長したってことだからオレは逆に嬉しかった」って。驚きましたよ。特に天保さんは、挨拶など教育面ですごく厳しい方でしたし、絶対に怒られると思っていたので。
――当の山田さんはいかがでしたか?
松永 あらためて、殴られる覚悟で謝りに行きましたが、「確かに、俺も7失点したからな」と全然怒っていませんでした。「お前がせっかく前の試合で、サヨナラのランニングホームランを打ってチームを勢いづけてくれたのに、オレが勢いを消したもんな」って。
それでも、先輩たちからは「お前、ヤマにそんなことをよくできたな」と言われましたし、自分の気持ちは複雑で......すごく悪いことをしたと思っていましたよ。
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