由規が語る、最初で最後となった台湾の一軍マウンドとこれから「野球を辞める理由がないんです。まだうまくなっていますから」 (4ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text & photo by Asa Satoshi

 しかし、ここで野球の神様がいたずらをする。登板予定日2日前の26日の試合が雨で流れてしまったのだ。5球団中、前期優勝を決めた統一セブンイレブン・ライオンズ以外の上位4チームが日替わりで首位につくデッドヒートを演じている後期シーズンにあって、「谷間」を埋める投手の立場など簡単に飛んでしまう。

 28日、モンキーズの本拠地・楽天桃園球場で行なわれた首位・富邦ガーディアンズとの一戦の先発マウンドには、由規と同じくシーズン途中にアメリカ独立リーグから移籍し、すでに2勝を挙げているジェイク・ダルバーグが上がった。

 リミットは3日後だが、翌日には登録枠はもとに戻る。つまり、由規に登板のチャンスを与えるには、一軍メンバーの誰かを二軍に落とさなければならず、事実上、この日が由規に残された最後のチャンスというわけだ。

【奇跡の一軍登板を果たしたが...】

「ここに来た時点で、自分の立場はわかっていましたから。先発がなくなった時点で『縁がなかったのかな』と思いました。でも、ジェイクに何かあった時か、終盤に点差が離れた時はもしかしたらあるかもなって......。気持ちだけは切らさず、初回から準備だけはしていました」

 試合は初回にいきなりガーディアンズが先制すると、その裏にあっさりモンキーズが2点を入れ逆転。点の奪い合いになるかと思われたが、その後は投手戦となり、7回を終えて4対1でモンキーズがリードを広げていた。

 8回表のガーディアンズの攻撃がゼロに終わると、セーブシチュエーションの前にブルペンではこの日の抑え役の黄子鵬がピッチングを始めた。

 だが、ここで野球の神様が今度は粋な計らいをする。モンキーズが8回裏に猛攻を見せたのだ。この回4点を奪い、点差を7点に広げた。

「一応、点差が開いたらあるかもって準備し始めたんですよ。ベンチからの指示もあったので。6対1になった時点でもう一度ベンチから連絡があって、あと2点入ればあるよって」

 何度もストレッチと準備体操を繰り返していた由規は、この日初めて投球練習を始めた。それまでピッチングをしていた黄は投げるのをやめ、ブルペンのみんなが備え付けのテレビ画面に釘づけになった。ランナーが出るたび、点が入るたび、ブルペンは沸いた。

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