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由規が語る、最初で最後となった台湾の一軍マウンドとこれから「野球を辞める理由がないんです。まだうまくなっていますから」 (3ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text & photo by Asa Satoshi

 今年、独立リーグ3年目を迎えた由規の頭のなかに、もうNPBはなかったのだろう。もっとうまくなりたい、若い選手を育てたい......そういう思いでマウンドに上がり続けていた由規のもとに舞い込んできたのが、台湾球界からのオファーだった。

【立場は5人目の外国人選手】

 今年7月初め、由規は6勝3敗の成績を残して埼玉武蔵ヒートベアーズを退団し、台湾リーグ入りした。新たに袖を通したユニフォームには「RAKUTEN」の文字が入っていた。楽天モンキーズの助っ人として契約した由規だったが、「5人目の外国人選手」という立場はわかっていた。

 台湾リーグの外国人登録枠は「4」。要するに、由規はほかの外国人選手が機能しなかった時のスペアだ。投手不足の台湾球界にあって、助っ人は投手と相場が決まっている。事実、楽天モンキーズの外国人選手は由規を含め、全員が投手だった。おまけにこの外国人登録枠は8月末をもって「3」に減らされる。由規に残された時間は多くなかった。

「最初は外国人投手の調子が悪いから獲ったという話だったんですけど、こっちに来てみるとみんな好調で(笑)」

 台湾でのスタートは二軍だった。ただし、外国人選手は基本的に一軍に帯同し、試合の時だけ二軍の球場に向かう。初登板は5回無失点にまとめ、勝利を飾った。そうやってふだんは一軍に帯同しながらベンチから試合を眺め、週1回の二軍のデーゲームでマウンドに登っている間に時間は過ぎていった。8月31日までに一軍の戦力として認められなければ、そこでシーズンは終わる。

 そんな由規に一軍から声がかかったのは、二軍での5度目の登板が終わったあとのことだ。初登板と同じ5イニングを無失点で終えると、8月28日の先発を告げられた。ふだんゲームのない月曜日に組まれたこの試合は、いわゆる予備ゲーム。つまり、ローテーションの谷間である。台湾ではこの月曜日の試合は、一軍登録枠が1つ増えることになっている。

 楽天モンキーズは、ここに由規をあてることにしたのだ。チームとしては、由規の最終テストをここで行ない、勝てば御の字。打たれて負ければ、そこで決断を下す。もちろん、由規もそのことは理解していた。

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