内海哲也「選手に『ああしろ』『こうしろ』と言う必要はない」 コーチになって心がけているのは「とにかく見ろ」 (4ページ目)
【行動するのは選手自身】
ただし、内海が言うようにサードスローの効果かはわからない。佐藤は「DIMENSIONING」という評判のジムを運営する北川雄介トレーナーにもアドバイスを仰いでいる。つまり、どれかひとつの取り組みが好調の要因ということではなく、いくつかの手がうまく噛み合って復調したのだろう。
誰のどの助言が、選手にうまく当てはまるかはわからない。だからこそ内海は観察を続け、きっかけを提案できるように心がけている。
「選手にたまたま当てはまるひと言を少しでも増やすために、いろいろ勉強しています。こっちから選手に言う時には、『合わなかったらやらなくていいし、ひとつのアイデアとして聞いてほしい』と言っています」
周囲が何を言おうが、最終的に決断し、行動するのは選手自身だ。そうした文脈で、コーチにできることは「大して多くない」と内海は考えている。無理やり背中を押して取り組ませても、本人の身にならないというスタンスだ。
その意味で、もどかしく感じているのが、2018年ドラフト2位の右腕投手・渡邉勇太朗(22歳)だ。内海と同じタイミングで西武に入団し、自主トレを一緒に行なったこともあるが、今はあえて多くを言わないようにしている。
「チャンスを掴みきれないもどかしさが本人にあって、コーチの僕らもそう感じています。もうちょっと泥臭く、課題に対して突き進んでほしいと正直思いますね。でも、『こうやったほうがいいよ』という声かけはできるけど、やるのは選手自身ですから......」
伸び悩む若手がいる一方、周囲の何気ないひと言から飛躍のきっかけを掴んだ投手もいる。2020年育成4位で入団し、今年7月21日に支配下契約を結んだ右腕投手の豆田泰志(20歳)だ。今季途中、山本由伸(オリックス)のようなクイック投法に変えてから急に台頭した。
「バイオメカニクス(動作分析)担当の武隈(祥太)がボソッと言ったんです。それでクイックで投げ始めたら、明らかに以前と違う球を投げ始めた。少し前にどん底にいたのが、ひとつのきっかけで一軍まで上り詰めました。豆田のシンデレラストーリーを見ると、コーチという仕事はやりがいがあると思いますね」
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