内海哲也「選手に『ああしろ』『こうしろ』と言う必要はない」 コーチになって心がけているのは「とにかく見ろ」 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【サードスローを提案すると...】

 まずは観察して選手の特徴を把握し、この練習をやれば上達するというメニューを与える。内海は現役時代、「サードスロー」という練習法を小谷に教えられ、投げ方のコツを体得した。文字どおり、サードで内野ノックを受けてファーストに投げるというメニューだ。

 投手はマウンドからホームベースまでの18.44メートルという距離にどうしてもとらわれ、身体の動きが小さくなってしまいがちだ。そうした内海のクセを小谷は見抜き、サードスローで下半身から上半身を連動させて大きく使う投げ方を繰り返させた。直後、ブルペンに行って投球練習をすると、自然と動きが大きくなって力のある球を投げられるようになった。

 昨季終了後、若手選手たちが宮崎県で実戦経験を積む場であるフェニックスリーグに帯同した際、内海はルーキー左腕の佐藤隼輔(23歳)にこの練習に取り組ませた。オフシーズンが明けてプロ2年目の今年、シーズン序盤にセットアッパーを任された佐藤は内海との練習をこう振り返る。

「もともと上半身の力に頼るクセがあったので、下半身から連動させる意識づけをテーマに行ないました。内海さんにはブルペンでも指導してもらい、土台をつくっていただいた。それが春先の状態のよさにつながっていると思います」

 佐藤は最速155キロを計測するなど、力強いボールで打者をねじ伏せた。7月前半に状態を落として登録抹消されると、ファームコーチの内海は再びサードスローを提案した。

「一軍は試合主体になるので、練習量が二軍より落ちます。だから投げ方が凝り固まってくる。その状態で投げ続けると、投球フォームも狂ってくることが僕の経験上でもありました。

 そういう時にはサードスローをして、体を大きく使って下半身から上半身の連動をもう1回呼び起こさせる。佐藤にもそういう意図で取り組みました。それがよかったのかはわかりませんけど」

 登録抹消から13日後の7月16日に再昇格した佐藤は、一軍で再び安定感のあるピッチングを見せるようになった。

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