盗塁王二度の緒方耕一が30歳の若さで引退も「そこで辞めたのは正解だった」と思うワケ
緒方耕一インタビュー(後編)
俊足を生かし、プロ1年目の秋からスイッチヒッターに転向した緒方耕一氏この記事に関連する写真を見る
【引退後に気づいた苦手・山本昌の攻略法】
── 1993年からは、満を持して長嶋茂雄監督が再登板します。この頃には緒方さんもレギュラーとして定着。チームの雰囲気はいかがでしたか?
緒方 松井(秀喜)や落合(博満)さんも入ってきて、「強いチームになるんだろうな」という思いはありましたね。長嶋さんも最初に監督になった時は鉄拳制裁も辞さない「熱さと怖さ」があったそうですけど、二度目の監督の時には勝負に対する「熱さ」はあったけど、かつてあったという「怖さ」は感じませんでしたね。
── この頃、得意だったピッチャー、苦手だったピッチャーは誰ですか?
緒方 とくに得意だったピッチャーはいなかったですけど、苦手だったのはドラゴンズの山本昌さんですね。ストレートでガンガン押してくるピッチャーはむしろ好きだったんですけどのらりくらりくるピッチャーは苦手でした。昌さんはシンカーが得意球だったので、「引っかけないようにしよう。反対方向に打とう」という意識が強すぎて、ボールを追いかけすぎていたような気がします。後に、昌さんにもこの話はしましたけど。
── 山本昌さんは何と言っていましたか?
緒方 引退後に昌さんにお会いして、「僕は逆方向に打つ意識でいました」って言うと、昌さんに、「あぁ、オレの一番好きなタイプ」と笑われました。「反対方向に打とう」という意識が強すぎると、ボールゾーンに逃げていく球まで追いかけて、余計に難しくなってしまう。「引っ張れるボールを待たれたほうが、逆にイヤだった」と聞いて、「現役時代に知りたかったな」って思いましたね(笑)。
── 実際、1番を打つことが多かった緒方さんにとって、「逆方向に打つ」ということは常に意識していたことでしょうからね。
緒方 まさにそうです。若い頃からずっと「おまえは引っ張ろうとするな」「長打を狙うな」と言われ続けていましたから。いかに転がして、野手の間を抜ける打球を打つか。そればかりを考えていましたね。僕は1番を打つことが多かったですけど、プレイボール直後のボールを打ったことは、たぶん1回か2回しかなかったと思います。一度、ミーティングですごく怒られたこともありましたね。
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