楽天・藤平尚真は完全復活となるか 「高校ビッグ4」と称され入団も低迷、再飛躍へ岸孝之とのキャッチボールから得たこと (3ページ目)
今シーズンの藤平は、そこに関しても手応えを抱いていると頷く。
「力を抜きながらも質のいいボールを投げていかないといけないなかで、今年はそれができているっていうのは、キャッチボールからいい感覚を持てているからだと思います」
このような「軸」が確立されたからといっても、課題が劇的に克服されたわけではない。今シーズンもフォアボールはそれなりにある。だが、今の藤平はそこでうろたえることはない。
これこそが、低迷期には見られなかった前向きな割りきりなのである。
「フォアボールは多いですけど、それを減らすために自主トレから感覚を養ってきましたし、『ストライクは入る』っていう状態は保てています。ピッチングのメカニックにしても、もっとよくなるとは思っていますけど、試合中に『こうしよう』って思いすぎて、そっちにばかり集中するのは自分では絶対によくないことだってわかってますからね」
まだ若い。だが、プロでの6年間は間違いなく藤平をたくましくした。それが今シーズン、マウンドで体現できている。
だからといって、満足するにはほど遠い。
「やってきたことはできていますけど......まあでも、『まだできる』って感じですね。今はまだ、シーズンを投げきるための準備なのかなって、僕はとらえているんで」
ほとばしる意欲は、すでに過去の自分を清算できていることを示している。
藤平は言う。
「何年やってきたかってより、1年、1年が勝負だと思ってやっていこうかなって」
2023年の勝負で、間違いなく言えること。
藤平にはもう、迷いはない。
著者プロフィール
田口元義 (たぐち・げんき)
1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。
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