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大谷翔平の大物ぶり、栗山英樹監督が会議で放った言葉、村上宗隆の不振と重圧...WBCの映画を野球ライターはどう見たか

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は6月2日~6月22日までの3週間限定公開映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は6月2日~6月22日までの3週間限定公開この記事に関連する写真を見る「夢のような結末だった」──。

 大谷翔平VSマイク・トラウトという日米のエンゼルス対決でフィナーレを迎えた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、周知のようにこれ以上ない幕切れとなった。9回に"リアル二刀流"としてリリーフ登板した大谷が、今季メジャーリーグを席巻するスイーパーで"キャプテン・アメリカ"を三振に斬ってとる最後は、野球を愛する日本人にとって誇らしい瞬間だった。

 6月2日から6月22日まで、3週間限定で上映されている映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は、ナレーターの上記の言葉とともに始まる。日本人の野球ファンなら何度でも見たいハッピーエンディングへどのように至るのか、侍たちの軌跡を内部から描いたドキュメンタリーだ。

※一部、ネタバレを含みます

【栗山英樹監督はエンターテイナーでもある】

 筆者は大会開幕を約1カ月半後に控えた1月26日、栗山英樹監督が発表した30人の日本代表選手リストを見て「日本選抜ではなく日本代表だ」と率直に思った。バントがうまい、世界に類を見ない技巧派など、指揮官が自分の思い描く戦い方を遂行してくれる選手を優先的に選ぶのではなく、実力的に優れた選手を上から順に選んだように感じられたからだ。

 大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(レッドソックス)、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)というメジャーリーガーや、佐々木朗希(ロッテ)、山本由伸(オリックス)、村上宗隆(ヤクルト)、髙橋宏斗(中日)などの国内組。日本の野球ファンがまさに夢見た代表だった。

 栗山英樹という指揮官が優れるのは、リアリストとエンターテイナーの顔を持ち合わせる点だと感じる。

 彼の言動で個人的に最も印象に残っているのは、日本ハム時代に10年ぶりの日本一に輝いた2016年オフ、札幌ドームで行なったインタビューのあとに問いかけられた一言だ。

「楽しかった?」

 リーグ戦で年俸総額2倍のソフトバンクを日本ハムはどうやって倒したのか(同年の推定年俸総額は日本ハム:24億9800万円VSソフトバンク:49億9500万円)。経済媒体の取材だったのでマネーやマネジメントを絡めて掘り下げていくと、"1番ピッチャー大谷"やクローザーを務めていた増井浩俊の先発転向など、常識に囚われない起用法や、早めの継投で個々の力を最大化する戦法が浮かび上がった。

 30分弱の対話で日本ハムの強みを探り終わった直後、栗山は上記のように聞いてきた。年間143試合のペナントレースでは個々の能力と選手層を掛け合わせた「チーム力」が勝負の行方を大きく左右するなか、年俸総額2倍の強敵を倒すという痛快ストーリーはそうそう見られない。「最高に楽しかったです」。栗山の質問に答えると、「よかった」と満面の笑みを浮かべていた。

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