広岡達朗が坂本勇人の現状に言及「巨人軍のスターは引き際が肝心。お金にしがみつくようだと終わりだ」 (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin
  • photo by Koike Yoshihiro

 実績のあるベテラン選手は引き際を選択できる権利があり、引かない選手に対しては監督が冷静に判断するしかない。それでもタイミングというものがある。

「ショートで長打率が高い坂本は前代未聞だという記事を見たが、松井稼頭央(現・西武監督)や宇野勝(元中日)だって長打率は高かった。坂本は堕落したとはいえ、巨人のショートとして10年以上もチームの中心選手となって攻守ともに高いレベルで活躍してきたことに意義がある。去り際の美学は人それぞれだが、川上(哲治)さんは3割を打てなくなって引退を決断し、ワンちゃん(王貞治)は自分のバッティングができなくなったと言って辞めた。あの江川(卓)だって、13勝を挙げたのに辞めた。3人とも惜しまれながら辞めていった。これが巨人軍のスターなんだ」

 広岡が言いたいのは、後進に道を譲らず金にしがみつくような真似はするなと。スター選手だからこその哲学を持って、引き際もしっかり考えるべきだと言いたいのだ。

「もし俺に預けてもらったら、坂本はクリーンアップから外さない。外す時は、引導を渡す時だ」

 このやり方は、功労者である坂本のプライドを考慮するだけでなく、復活させる意味合いも当然含まれており、決して最後通告ではない。それがスター選手に対し、舞台から降りるかどうかの丁重な導き方でもあるのだ。広岡はいつにもなく優しい口調で語った。

著者プロフィール

  • 松永多佳倫

    松永多佳倫 (まつなが・たかりん)

    1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。

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