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斎藤佑樹が駒大苫小牧との決勝再試合で初球に投げた最強のボール。「あの夏の甲子園、僕は覚醒していた」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 監督は決勝の前にはそういう決意を言葉にしなかったのに、あえて再試合の前に緩んだ空気を締め直そうとしたんです。僕も決勝で15回、178球を投げてみて、駒大苫小牧に感じていた底知れぬ恐怖感のようなものはもう、完全に吹き飛んでいました(15回を投げて被安打7、与四死球6、奪三振16、失点はホームランによる1点)。

 駒苫って、たとえばどんなにマー君(田中将大)の調子が悪くても、どれだけ打ち合いの試合になっても、最後は勝つチームだというイメージがありました。そういう不気味さのようなものが僕のなかから消えていました。再試合に向けての不安は、まったくなくなっていたんです。

 だから1試合目と2試合目、僕にとっての駒大苫小牧はまったく違うチームでした。相手バッターの雰囲気も疲れていたし、逆に僕たちはピンピンしている感じで......なぜか試合前から飛び跳ねるぐらいの感じになることがあるんです。それだけ気持ちが高ぶっていたというか、自分の思ったとおりに身体を動かすことができて、思いどおりの野球ができる感じ。再試合の前は、ちょうどそんな感じでした。いずれにしてもあと1試合で夏休みでしたしね(笑)。

どこまでもポジティブ

 決勝の再試合、駒大苫小牧の先発はまたも2年生の菊地(翔太)くんで、早実の先発は僕です。1回表、駒苫は1番の三谷(忠央)くんが右バッターボックスに入りました。その初球です。ストレートがスッとアウトコースのストライクゾーンに吸い込まれていきました。その時「このボールは最強だ」と思ったんです。こんなボールが投げられるようになったのかと、すごく感動した1球でした。スピードは126キロだったかな。右バッターのアウトコースへ、真っすぐがヒョロヒョロヒョロ〜って、遅いんですけど、でも落ちていかない。そんなストレートでした。こんなの、もう最強でしょう。

 あの時は何ができていたからああいうボールが投げられたのか......ずっと考えていましたが、ハッキリとした答えは見つかりませんでした。

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