少年時代のロッテ髙部瑛斗に「左打ち」を進言したのは松永浩美だった。今季の活躍にも「アキならもっとできる」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

――現在の髙部選手は左打ちですが、最初からそうだったんですか?

松永 野球塾に入ってきた時は右打ちでした。ただ、右は見た瞬間に「ちょっと難しいな」と思いましたね。小さい頃から身につけてしまった、あまりよくないクセがあったので。左で振らせてみたら、そちらのスイングは素直だったので、「左にしたほうがいいんじゃない?」と進言しました。

――右打ちと左打ちで、具体的にどんなところが違いましたか?

松永 右で打っていた時は、同じ方向にしか飛ばなかったんです。フェアグラウンドは角度が90度あるのに、そのうちの20度ぐらいしか使えていませんでした。そうなると相手も守りやすいですよね。いくらボールを遠くに飛ばせても、限られた方向にしか打てないのはダメです。

 それが左の場合は、打球がいろいろな方向に飛んだんですよ。打球の方向が広がるとヒットの確率も上がりますし、左打ちにすればアキはもっと野球を楽しめるだろうなと思いました。

――他に、どんなアドバイスをしたか覚えていますか?

松永 スポーツはどの競技であっても、"頭で思っていること"と"首から下の動き"にギャップがあるものなのですが、それに気づかない選手が多い、という話をしましたね。頭の中で整理できただけで、実際にプレーしている自分の姿を見てもいないのに、「できている」と判断してしまうんです。

 そういう話をしたら、アキは「自分の打っているところを見てくれますか?」と言ってきて。それでバッティングを見て「ちょっと違うな」と伝えると、「違うのか......」という表情になりましたが、その「違い」をしっかり理解して、すぐに修正ができました。そういった修正作業ができる子は、私の印象では1割もいないと思います。

――突き詰めていく力があるということでしょうか。

松永 アキはそんなタイプですね。中学3年生の夏には、ボーイズリーグなどの活動が終わって、高校入学までに6、7カ月くらいの空白期間ができてしまった。そこで私は野球塾の中でチームを作って、夏以降も毎週土曜と日曜に練習試合などができる環境を作ってあげたんです。アキはそのチームに入って、1度も休むことがありませんでした。

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