「MLBの一流選手は究極の手打ち」。大谷翔平や鈴木誠也をメジャー流の打撃理論で根鈴雄次が分析 (2ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 撮影●小川正行 photo by Ogawa Masayuki

――根鈴さんはMLBとNPBの違いに「ファストボールへの対応」という持論を持っていますね。

根鈴 松井秀喜さんが巨人に在籍した最終年で、まだ日本にいた頃の話です。メジャーの某球団のスカウトが松井さんの視察をする際、アテンドでそれに同行したことがあるんです。松井さんのフリーバッティングはエグかったんですが、スカウトはそこに関心を持ちませんでした。その理由を聞くと、「メジャーでは打撃練習は調整。問題は試合でファストボールを一発で仕留める力をどれほど備えているかだ」と。ちなみにその試合で、松井さんは150キロ近いストレートを軽々スタンドイン。スカウトは「ゴジラ......」と唸ってましたよ(笑)。

――評価するポイントが日本とアメリカでは違うと感じたんですね。

根鈴 そのスカウトは、当時日本にいた助っ人のロベルト・ペタジーニやアレックス・カブレラ、タフィ・ローズらの試合も視察したんです。そこでスカウトは「ユウジ、なぜ彼らがメジャーでは活躍できなかったのか。答えはシンプル。150キロ超のファストボールをミスショットするからだ」と話していました。

 今では日本でも150キロを超える球を投げる投手が増えましたが、当時は少なかった。僕が3Aでやっていた時も、相手の投手はコントロールはさておき、150キロ台のボールをバンバン投げ込んできていた。それを一発で仕留められるか、力負けしないか、という点が一番の評価ポイントだと確信した出来事でした。

――近年、日本でも「フライボール革命」という言葉が浸透してきましたが、この点について感じることは?

根鈴 正直、日本でいうところの「フライボール革命」には誤解があると思うんです。日本でフライボールというと、山なりのフライのイメージが浸透していますが、メジャーではライナーのことを指します。ここの認識から変えていなかいといけない。実際に大谷選手の打球もライナー性のものが多いし、好打者ほど同じような感じです。では、そのライナーを打つためにどんな技術が必要か、という視点がないといけないので、多くの日本の指導はそもそもの出発点に違和感があるんです。

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