「MLBの一流選手は究極の手打ち」。大谷翔平や鈴木誠也をメジャー流の打撃理論で根鈴雄次が分析 (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文 text by Kurita Shimei
  • 撮影●小川正行 photo by Ogawa Masayuki

――具体的に、ライナーを打つために必要な技術とはどのようなものでしょうか。

根鈴 これはバリー・ボンズやマーク・マグワイアがホームラン王争いをしていた頃から変わりませんが、向こうの一線級のスラッガーは"究極の手打ち"なんですよ。体全体を使ったり、打球にスピンをかけて飛距離を伸ばす、足を大きくあげてタイミングをとる、ということは高い技術を必要とします。例えば、メジャーの関係者が山田哲人選手のスイングを見た時には、「よく、あんなに足を上げてタイミングを取るなんていう難しい技術を身につけたね」といった表現を使ったりする。

 これは「確実性を高める」という概念に起因しているんでしょう。それならバットを縦に振ってボールが当たる"面"を広げて、力で押し込むほうがミスショットは少ない。パワーがあれば、上半身の力を利用して打つことで自然と打球に角度がつくので、MLBでは筋力を重視します。単純な素振りもほとんどしませんし、その時間に筋トレをしている選手が多い。170キロ超のウエイトも軽々と上げる選手もたくさんいます。

――反面、日本では上半身の筋トレを行なわなほういがいいという概念もありますよね。

根鈴 メジャーの考え方はシンプルで、「150キロのボールをどうすれば確実に捉えられるか」。そこで主流となっているのが手打ちであり、縦のスイング。その理論で打つためには筋力も必要である、という結論に至るわけです。

 これはすべての選手に当てはまるわけではありません。ただ、大谷選手をはじめ、MLBで活躍する選手はやっていること。技術で勝負するためには、イチローさんのような天才的な感覚を持ち合わせていないと、単純に力負けする可能性が出てきます。

 ひとつ残念だったのは、パイレーツの筒香嘉智選手が、「筋トレはやらない」と発言したことです。もちろん個々の自由ですが、影響力もある偉大なバッターですからね。確実性を高める、メジャーを目指す、という視点からは逆行しているようにも感じてしまいます。特に最近では、高校野球の指導者でも筋トレや"食トレ"の意識が非常に高まってきているので。

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