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真中満が高津臣吾監督に聞いた奥川恭伸と石川雅規の起用法。「非情と感じた」鬼の采配にも迫った (3ページ目)

  • 長谷川晶一●構成 text by Hasegawa Shoichi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

【どんな場面でも力を発揮する大ベテラン】

真中 この阪神戦では藤浪晋太郎のツーランホームランの2点で負けてしまったけど、内容はよかったから次はいつ投げさせるんだろうと見ていたら、次の登板は6月4日、交流戦での埼玉西武ライオンズ戦でした。石川の早めの起用は考えていなかったんですか?

高津 彼の場合、「投げろ」と言われたら、中4日でも投げられるピッチャーなので、早めに投げさせることはできたと思います。でも、石川も含めた競争のなかで時期を計っていたというのはあるし、代わりの投手層の厚みが増したというのもありますね。

真中 もちろん監督としてはチームの勝利が第一だけど、石川にぜひ200勝してほしいという思いもあると思うんです。でも、いくら甲子園でのピッチングがよくても、他に好調な投手がいるのならば、ある意味では、石川と心中している場合じゃないんだと非情に徹する。そんな鬼の采配を感じましたね。

高津監督に次々に質問をぶつける真中満氏高津監督に次々に質問をぶつける真中満氏この記事に関連する写真を見る高津 もちろん、彼に200勝を達成してほしいという思いはあるけど、本人もチームの勝利を優先してくれるし、変なプライドを持っている選手ではないですからね。きちんと理由を説明して、「必ずチャンスはある」と、こちらの考えを伝えたら、理解してくれたと思います。

真中 甲子園での登板から1カ月以上経った6月4日、雨の神宮球場。西武相手に10対1で5回降雨コールド「完投」しました。あの試合、僕も中継していたんだけどうれしかったですね。監督としてもうれしかったんじゃないですか?

高津 打線が早めに援護してくれたんですよね。あの日、天候状態がよくないという情報はもちろん入っていました。試合開始時間も少し遅れたけど、そういう不安定な状況にはまさに適したピッチャーでしたよね。あの日はまさに石川でよかった。こっちのペースでパパパッと進められるピッチングですからね。

真中 ここから石川は3連勝しましたね。

高津 その点はやはりさすがですよ。雨のなかでの登板だったり、登板間隔が一定していなかったり、なかなかできることじゃないですから。(高橋)奎二や奥川に「やってみろ」と言っても、精神的にも、肉体的にもなかなかできることじゃないですから。

(第3回:高津臣吾監督が真中満に打ち明ける、日本シリーズで「2カ所だけ迷ったところ」>>)

【プロフィール】 
高津臣吾 たかつ・しんご 
1968年、広島県生まれ。広島工高、亜細亜大を卒業後、1990年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。守護神として活躍し、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年、MLBシカゴ・ホワイトソックスへ移籍。その後、ヤクルト復帰や、韓国、台湾のプロ野球、独立リーグ・新潟アルビレックスBCを経て、2012年に現役引退。ヤクルトの一軍投手コーチや二軍監督を務めたのち、2020年から一軍監督に就任。2021年にはチームを日本一に導いた。

真中満 まなか・みつる 
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、08年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。15年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。

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