真中満が高津臣吾監督に聞いた奥川恭伸と石川雅規の起用法。「非情と感じた」鬼の采配にも迫った

  • 長谷川晶一●構成 text by Hasegawa Shoichi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

高津臣吾×真中満 対談
第2回「若手とベテランの活躍」

昨年、ヤクルトスワローズを日本一に導いた高津臣吾監督と、元ヤクルト監督でプロ野球解説者の真中満氏が対談。高津氏は1991年入団、真中氏は1993年入団でヤクルト現役時代には年齢の近い先輩・後輩関係で、2017年に真中氏が監督の時には高津氏が二軍監督というお互いをよく知る仲だ。「高津ヤクルト」が前年最下位から一気に強くなった要因は何だったのか。連覇をかける2022年シーズンに向けての課題や抱負は。息の合ったふたりの対談を全4回にわたってお届けする。(第1回から読む>>)

2021年4月8日、プロ初勝利を挙げた奥川恭伸(右)と高津臣吾監督 photo by Kyodo News2021年4月8日、プロ初勝利を挙げた奥川恭伸(右)と高津臣吾監督 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る

【笑顔の裏に秘めた奥川恭伸の燃え盛る闘志】

真中満(以下、真中) オリンピックブレイクを経て、後半戦が再開しました。僕は、誰を最初に持ってくるんだろうと後半戦の開幕投手に注目していたんだけど、高津監督は奥川恭伸を指名しましたね。これはずっと前から決めていたんですか?

高津臣吾(以下、高津) 決めていましたね。理由としては、登板数を投げさせたかったからです。後半戦の最初に投げさせれば、たとえ中9日でも中10日であっても、1試合でも多く投げることができる。だから、できるだけ早めに彼には伝えていました。

真中 しかも、当初の試合が雨で流れてプロ初となるスライド登板でしたよね。

高津 でも、こちらが心配しているほど、後半の開幕戦だからとか、スライド登板だからという感じはなかったですよ。結果的に、クライマックスシリーズ(CS)と日本シリーズでも初戦をヤス(奥川)に任せるわけだけど、こちらが思うほど本人は気にしていないみたい(笑)。実際はどうかわからないが......。

真中 意外と能天気というのか、周りに流されないタイプなんですか?

高津 マウンドの姿を見ていると、いつも笑顔で、全力で頑張っているという感じじゃないですか。でも、結構細かくて神経質な部分はあるし、気の強い部分もありますよ。日本シリーズ初戦で(スティーブン・)モヤにホームランを打たれたじゃないですか。

真中 1対0でリードした7回裏、代打のモヤにどでかい一発を喫しましたね。

高津 あの場面で降板した時に、「次は第7戦を頼むぞ」って彼に告げたんです。その時の悔しそうな表情、そして身体の熱は忘れられないですね。めちゃめちゃ興奮して、めちゃめちゃ悔しがっていた。あとで聞いたら、「絶対にあんなところに投げるつもりはなかったし、何であそこに投げたのか自分でもわかりません」って言っていましたね。とにかく、僕らが思っている以上に、内面には熱いものがあるんだなって思いました。

真中 ふだんはニコニコして、物腰も柔らかい感じですもんね。

高津 そうそう。でも、彼の肩をポンポンと触った時の身体の熱は忘れられない。ただ、本人はどう思っているのかはわからないけど、CSでも日本シリーズでも自分のピッチングを見せましたからね。どんな場面であっても、ちゃんと自分をコントロールできるのはすごいことですよ。

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