又吉克樹を獲得したソフトバンクGMに聞いた。FAでは「高値であっても確実に獲りにいく場合もある」
【短期連載】なぜ日本のFA制度は活用されないのか
第5回「ソフトバンク三笠GMが語るFAと育成のバランス」@前編
2022年の春季キャンプが始まり、各球団は開幕に向けて準備を進めている。球春到来前のストーブリーグを改めて振り返ると、"主役"になったのは覇権奪回を目指すソフトバンクだった。
FAでは唯一市場に出た右腕投手、又吉克樹(前・中日)を4年総額6億5000万円で獲得(金額は推定、以下同)。国内FA権を取得した千賀滉大とは変動制の5年契約の年俸6億円(オプトアウト=契約破棄条項付き)、今年中にFA権を取得する見込みの武田翔太とも変動制の4年総額6億円超の大型契約を結んだ。
長引くコロナ禍で各球団は経営に打撃を受けるなか、ソフトバンクは圧倒的な資金力を示した格好だ。中日時代に年俸4200万円だった又吉にはDeNAやオリックスも獲得に動いたと報じられる一方、早々とビッグディールを成立させている。
◆第1回はこちら>>日本のFA制度は機能不全となっている?
◆第2回はこちら>>選手と監督、両方の立場でFAと向き合った谷繁元信氏の主張
◆第3回はこちら>>日米のFA制度、文化の違いから考える
◆第4回はこちら>>チーム戦略部長・壁谷周介氏にDeNAの未来図を聞いた
ソフトバンクの三笠杉彦GM(左)と又吉克樹(右)この記事に関連する写真を見る「獲得調査を行なうなかで、市場価値と大きく異なっていないオファーだったことは確認しています」
ソフトバンクの三笠杉彦GMはそう明かすと、同時に会社としての考え方を説明した。
「オークションの話ですから、必ず獲りたい時は高値であっても確実に獲りにいく場合もあります。『勝者の呪い』という言葉があるように、オークションで高値づかみをした結果、お金を使いすぎることは一般論の注意点としてあり得ます。でも、それは競争だから仕方ない部分もあると思っています」
高値づかみは株式の市場用語で、「株価が高値をつけたあたりで株式を買うこと」(野村證券HPより)。「勝者の呪い」は三笠GMが説明するように、オークションで市場価値より高い額で落札することを意味する。
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