又吉克樹を獲得したソフトバンクGMに聞いた。FAでは「高値であっても確実に獲りにいく場合もある」 (4ページ目)
【いい選手を世界中から探す】
三笠GMは選手個々の「ピーク」に目を向けたうえで、チーム全体の「編成面」からこう続けた。
「球団にいる若手の選手と、FAになった選手の天秤ですね。若手の出場機会を奪うことと、チームの勝利を目指すことに関してどう考えるか。短期で見た時の"来年の勝利"と、中長期的な"継続的な勝利"を重ね合わせて、総合的に判断します」
ソフトバンクは日本人選手だけでなく、外国人選手も独特のアプローチで獲得している。2019年にはMLBの1巡目指名を拒否したスチュワート・ジュニアと6年総額1200万ドル(約13億2000万円)で契約した。アメリカの大物アマチュア選手を独自に育てようという発想は、日本では珍しい。以前には、キューバから亡命した超大物投手と入団合意寸前だったという話もある。
昨秋には、ドミニカ共和国から16歳の内野手フランケリー・ヘラルディーノ、17歳の外野手マルコ・シモン、21歳の投手マイロン・フェリックス、メキシコから17歳の投手アレクサンダー・アルメンタを育成枠で獲得した。才能豊かなティーンエイジャーが数多くいる中南米で発掘、育成するのはMLB全球団が行なっており、ソフトバンクも追随した格好だ。
「いい選手を探すマーケットは大きいほうがいいと思うので、世界中で探しています。もうひとつは一般的な考え方だと思いますが、人間が育つ時、多様性が確保されているほうが競争環境として効果が高いと考えています。
一方で、日本の野球市場がサチュレイト(saturate=飽和)しているような背景もあります。外国人枠という制限があるから、投資に対して効果、果実を得ることの障害はありますが、中南米やアジアの韓国、台湾の選手もどんどん獲ればいいと思っています」
育成枠での獲得は初期投資を抑えられ、うまくいけばリターンが大きいものの、育て上げるのは容易ではない。8軍相当とされるドミニカのMLBアカデミーから、頂点のメジャーリーグに昇格する確率は2%と言われる。現地では野球の指導だけでなく、英語やアメリカ文化の授業も行なわれている。
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