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社会人で戦力外寸前からの大逆転劇。高梨雄平は球界屈指の「左キラー」へと上り詰めた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

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連載『なんで私がプロ野球選手に⁉』
第6回 高梨雄平・後編

前編はこちら>>

 異色の経歴を辿った野球人にスポットを当てるシリーズ『なんで、私がプロ野球選手に!?』。第6回後編は、ドラフト直前にサイドハンドに転向した高梨雄平(巨人)のプロ入り秘話を紹介する。

球界屈指の「左キラー」となった巨人・高梨雄平球界屈指の「左キラー」となった巨人・高梨雄平この記事に関連する写真を見る「曲がらないな......」

 ブルペンで投球を受けるJX−ENEOS(現・ENEOS)の捕手・柏木秀文は首を傾げた。サイドハンドに転向した高梨だったが、110キロ台半ばのスライダーが思うように変化しなかったのだ。

 高梨はサイドスローの師匠で、5歳年下の鈴木健矢に「どうやって投げるの?」と尋ねた。鈴木は高梨にこんなコツを伝授した。

「指に抜けながら、引っかかる感覚です」

 何度聞いても、その感覚が高梨にはわからなかった。サイドスローなのにスライダーが曲がらない。それは致命的な弱点と言ってよかった。

【スカウトの目を奪った内角攻め】

 そんなある日、楽天スカウトの後関昌彦(現・スカウト部長)はJX−ENEOSのオープン戦を視察に訪れた。そこでサイドハンドの高梨を初めて目の当たりにする。

 フォームを変えて間もないこともあり、「コントロールがばらついているな」と後関は感じたという。だが、ひとつだけ好印象だった部分があった。

「左バッターのインコースにガンガン攻められて、デッドボールになっても次のバッターにすぐインコースを投げていたんです」

 左打者のインコースに投げるのが苦手な左投手は、意外と多いものだ。必然的に配球は外角に偏り、打者は狙い球を絞りやすくなる。だが、高梨は左打者の内角を突くことは苦ではなかった。というよりも、あえて狙っていた。

「2016年当時は、プロも社会人も左のサイドと言えば真っすぐとスライダーだけというタイプが多かったんです。インコースを突けるのは評価してもらえるだろうなと思っていました」

 そして高梨は不敵に笑い、こうつけ加えた。

「スライダーを投げたら、曲がらないってネタばれするじゃないですか。だから、真っすぐとシュートをひたすら左打者のインコースに投げ続けるしかなかった。でも、『こいつにスライダーがあったら面白いんじゃないか?』と余白を面白がってもらえるんじゃないかと思ったんです」

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