2022.02.09

イップス、制球難、ベンチ外…ドラフトまで4カ月、高梨雄平は突然サイドスロー転向を決めた

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

連載『なんで私がプロ野球選手に⁉』
第6回 高梨雄平・前編

 プロ野球は弱肉強食の世界。幼少期から神童ともてはやされたエリートがひしめく厳しい競争社会だが、なかには「なぜ、この選手がプロの世界に入れたのか?」と不思議に思える、異色の経歴を辿った人物がいる。そんな野球人にスポットを当てるシリーズ『なんで、私がプロ野球選手に!?』。第6回に登場するのは、高梨雄平(巨人)。名門企業チームで戦力外寸前だった投手が、ドラフト直前にサイドスローに転向。球界を代表する左キラーになったサクセスストーリーを紹介しよう。

社会人時代にサイドスローに転向した高梨雄平社会人時代にサイドスローに転向した高梨雄平 この記事に関連する写真を見る ── もし、自分がプロ球団のスカウトだったら、高梨雄平という投手をスカウトしましたか?

 その問いに、高梨は真顔で即答した。

「絶対に獲らないですね」

 その言葉だけでは真意が伝わらないと思ったのか、高梨はこう続けた。

「プレーを見ただけだったら獲らないです。こうやって会話とかして、どういう人間なのかを判断していたら、下位だったら獲るかもしれないです。普通は獲ろうと思わないですよ。だから後関さん(昌彦/楽天スカウト部長)には感謝しかないですね」

 楽天で3年、巨人で2年。ここまでプロ5年間で263試合に登板し、85ホールド、防御率2.26を挙げている左キラー。それが、高梨がプロの世界で見せている顔である。だが、社会人時代の高梨はどんな顔を見せていたのだろうか。

【イップス発症で極度の制球難に】

 JX−ENEOS(現・ENEOS)の正捕手だった日高一晃は、2015年4月に入社した当時の高梨について「とにかくストライクが入らない」という印象を受けていた。

「高梨が大学3年の時に完全試合をした映像を見ていたんですけど、その時と比べると全然よくねぇな、と思ってしまいましたね」

 高梨は早稲田大3年春の東京六大学リーグ・東京大戦で史上3人目となる完全試合を達成していた。なお、当時の投球フォームはサイドハンドではなく、オーソドックスなオーバースローだった。