ライバル→チームメイト→スタッフとして。榎下陽大が語る斎藤佑樹「野球の神様が味方についていた」 (5ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 細野晋司●写真 photo by Hosono Shinji

 斎藤は、いい意味で18歳の時から変わらなかったと思います。あれだけ騒がれて持ち上げられて、でもケガをしてからはネットでも叩かれて、それでも斎藤から弱音は一度も聞いたことがありません。「うまくいかないな、なんでうまくいかないんだろう」って野球のことで突き詰めようとしていたことはあっても、落ち込んだり愚痴をこぼしたりということは一度もありませんでした。きっと、誰に対してもそうなんでしょうね。肩を痛めて、ヒジも痛めて、僕が「大丈夫なの」って聞くことはあっても、斎藤はいつも周りに対しては笑顔で接していました。

 きっと斎藤には野球の神様が味方についてくれていたんでしょうね。甲子園で野球の神様に選んでもらった人なんじゃないかな。そうじゃないとあんなピッチングはできないし、周りもあんなフィーバーにはならないでしょう。だから斎藤は、周りがつくり上げた斎藤佑樹と自分自身の2人をうまく合体させていた。それができたのは野球の神様が味方してくれたからなんだろうな、と僕は思っています。

 その分、彼は斎藤佑樹であり続けるために愚痴や人の悪口を言わなかったり、そういうところはあったのかもしれません。野球界のスターですから、周りが期待しない斎藤佑樹であってはならないみたいな......だから最後までああいう笑顔で野球をやり続けてこられたんじゃないかな。

 斎藤って年上、年下にかかわらず、支配下だろうが育成だろうが、スタッフだろうが選手だろうが、誰に対しても同じように接して、よく話を聞くんです。早実で斎藤のチームメイトだった船橋とついこの前、電話で話をしたんですけど、彼も「斎藤は高校の時からベンチ外、メンバーかかわらず、誰とでも同じように接していたよ」と言ってました。

 そうやって聞くと、周りがつくった斎藤佑樹じゃなくて、もともとの斎藤佑樹がそうだったのかなと思います。だとしたら育ちのおかげなのか、その人間性ってすごいですよね。ただ、斎藤、たしかに話はよく聞いてくれるんですけど、それを覚えてないことが多い(笑)。だから「おい、ホントに聞いてたのかよ!」と思うことはありますね(苦笑)。

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