元阪神ドラ1・伊藤隼太が語る今季の覚悟。「自分の野球に決着をつける。シーズンが終わった時にどういう景色が見えているか」 (5ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori

 そこで「もっともっと野球がしたい」と思うのか、「野球はやり切ったのでもういい」となるのかわかりません。ただ、こうした貴重な経験の中で、もし野球ではない世界に進んだとしても、絶対に活かせるものがあるし、活かさない手はない。人間的に学ぶ時間かもしれませんね。「来てくれてよかった」と言われるように頑張ります。

ーーその先の景色がどのように見えるかは楽しみですか?

伊藤 いや、現時点で僕は楽しいですよ! 選手としてはプレーできていないですけど、若い選手たちと一緒になってああでもない、こうでもないと言いながら、「どうやったらうまくなるか」「どうやったら試合に勝てるか」を考えることが楽しい。それが「エンジョイベースボール」だと思いますし、昨年、一昨年とは比較にならないくらい充実しています。

 このインタビュー直前に(阪神の)糸原(健斗内野手)と電話で近況を話していたんですが、「隼太さん、楽しそうですね」と言われました。そういえば、妻にもいい顔になったと言われるんです。

ーーそう話して、伊藤は満面の笑みを見せた。「元・阪神タイガースドラフト1位」だからこそ経験した......、ひょっとしたら「経験させられてしまった」さまざまな出来事があったかもしれない。しかし、そのすべてを糧にした伊藤隼太は今、愛媛の地で確かに輝いている。

【profile】 
伊藤隼太 いとう・はやた 
1989年、愛知県生まれ。中京大中京高、慶應大を経て、2011年ドラフト会議で阪神から1位指名を受ける。1年目から開幕スタメン外野手として出場したものの、成績を残せずに1軍に定着できない日々が続いた。17年から代打で頭角を現し始め、18年にはシーズン通じて1軍に帯同しチームに貢献。20年に戦力外通行を受け、21年より四国アイランドリーグplus・愛媛マンダリンパイレーツでコーチ兼選手を務めている。

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