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松井秀喜から「ありがとう」。
五十嵐亮太は全球ストレートを投じた (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【そして、現役最後のマウンドへ】

 投げた19球、すべてがストレートという衝撃的なデビュー戦が象徴するように、速球での勝負がファンを魅了した。

 プロ5年目となる2002年10月10日、巨人・松井秀喜の日本における最後の試合。その最終打席でも、やはり五十嵐は全球ストレートを投じた。結果的には松井にシーズン50号を喫することになったが、若き五十嵐の名場面のひとつだった。松井はこの時、攻守交代の際に五十嵐に近づいて「ありがとう」と伝えたという。

 そして2010年には五十嵐自身もメジャーリーグでプレーし、日本に戻った2013年からはソフトバンクの一員として、チーム日本一の立役者にもなった。「もう、ヤクルトとの縁は切れたのか?」と思っていたが、昨年、電撃的に古巣への復帰が決まった。

 背番号53が神宮球場に帰ってきた。自慢のストレートだけではなく、ナックルカーブという新たな武器を交えて、かつての荒々しいピッチングから、大人のマウンドさばきを見せてくれたことが嬉しかった。

 同年の4月5日に古巣復帰後の初勝利を挙げた際には、およそ10年ぶりに神宮球場のお立ち台に立った。この時、五十嵐は「ただいま!」と笑顔で発した。その瞬間を噛みしめるように、スタンドを眺める姿が印象的だった。

 現一軍投手コーチの石井弘寿とは、かつて「ロケットボーイズ」と呼ばれ、ヤクルトの"勝利の方程式"の一員として大活躍した。五十嵐と石井がきちんと試合を作り、守護神の高津臣吾にバトンを託したあの日々が懐かしい。

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