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マギーが「一生の宝物」という腕時計。
今も忘れ得ぬ闘将との熱い日々 (4ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 そして第7戦の試合前。マギーとA・Jはどんな様子で田中がロッカールームに現れるのか注目していると、登板日と同じように、静かで集中力が高まっている表情で入ってきた。マギーが振り返る。

「とにかく私たちは、負けた翌日の田中を知らない。だからその表情を見て、いつもこんな感じなのか、それとも今日投げるからのか、まったくわかりませんでした。とはいえ、前日に完投して160球も投げているピッチャーが、翌日も登板するなんて想像できない。AJと目を合わせて、『まさか投げないよな......』と言ったことは覚えています」

 試合は楽天の3点リードで9回を迎えた。すると、球場に田中の登場曲が流れ始めた。そのときマギーはこんなことを思っていたという。

「もし星野監督が田中と同じ状況だったら、絶対にマウンドに上がっていたと思います。星野監督と田中がどんな会話をしたのかはわかりませんが、私はあの終わり方は星野監督流だと感じました。星野監督しかできない試合、それが日本シリーズの第7戦でした」

 あれから5年が経ち、星野監督もこの世にいない。それでもマギーの記憶の中から星野監督と戦った2013年の激闘は消えることはない。

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