マギーが「一生の宝物」という腕時計。
今も忘れ得ぬ闘将との熱い日々 (3ページ目)
あまりにも完璧な発音だったので、マギーは驚いた。それまでビジネスライクな会話しかしてこなかったが、このとき初めて、マギーは星野監督の本音に触れたような気がした。選手やメディアの前では、英語ができないフリをしていたが、実際は流暢な英語を話す。このことは、ふたりだけの秘密になった。
なによりマギーが星野監督を尊敬していたのは、オンとオフの切り替えのうまさだった。試合中は勝つことに全力を注ぎ、ものすごい闘争心で相手にぶつかるが、それ以外のときは優しく、いつも人に気を配る。誰も見ていないところでの星野監督の温かさに、マギーは心惹かれていった。
そうしてマギーと星野監督は確かな信頼関係を築いていった。それはマギーが試合に出場した「144」という数字が物語っている。マギー自身、キャリアのなかでシーズン全試合に出場したのは初めての経験だった。その思いに応えるように、マギーはキャリアハイとなる28本塁打をマーク。チームの優勝に大きく貢献した。
またマギーは、人間性だけじゃなく、監督としての手腕にも一目置いていた。新人の則本昂大を開幕投手に指名したことをはじめ、ブルペンの使い方、選手起用法など、面白いようにはまった。マギーは言う。
「普通に考えれば、私とA・Jを3、4番に置くと思うんです。でも星野監督は当時まだ売り出し中の銀次を早い段階で3番に起用し、打線は一気に機能し始めました。そうした発想はどこから出てきたのか、本当に頭のいい人だなって......」
日本シリーズでも星野監督ならではの戦い方に、マギーは感動した。なかでも印象に残っているのが第7戦だ。
その前日、勝てば日本一が決まる楽天はエース・田中将大がマウンドに上がり、160球の熱投を見せるも、2-4で敗れて逆王手をかけられてしまう。この年、田中はシーズン24連勝をマークし、日本シリーズでも第2戦に先発して勝ちを収めていた。田中のロッカーはマギーとA・Jの横にあり、ふたりはそれまで彼の負けた姿を一度も見たことがなかった。
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