元独立リーガーがドラフト1位ルーキー・小笠原慎之介に託した夢 (4ページ目)
地元の有志が開催した指名の祝賀会でも長坂氏は同席しながら、まだ高校生だった小笠原の立場を考え、一緒にフレームに収まることはなかった。それでも、師弟関係が切れることはなかった。プロ入りした愛弟子に長坂氏は、自らの“失敗”を踏まえてこんな言葉を贈った。
「かわいがられる選手になりなさい」
長坂氏は大学時代に監督の指導に従わず、一度は野球から離れた。アメリカの独立リーグからドラフト候補になったときも、NPBの二軍とのオープン戦で完璧なピッチングを披露しながらストレート一辺倒の内容に苦言を呈したスカウトに、「ストレートだけでも十分抑えたでしょ。あんな連中相手に変化球は必要ないですよ」とやり返している。いま思えば、“若気の至り”なのだが、同じような思いを愛弟子にしてほしくない。
「彼には言いました。一流の選手はかわいがってくれるだろうけど、高卒でいきなり一軍だと、いろいろ言ってくる先輩がいるかもしれない。でも、そういうのもうまくこなしていかなきゃ。誰かとケンカしちゃって、その後しばらくは実力で封じ込めても、野球界は狭い。その人がその先、コーチなどでチームに戻ってくることもあるかもしれない。彼はこれから伸びる選手です。くだらないことで、伸びしろを失うことはしてほしくない」
プレー以外のことで将来をつぶしてしまうことの愚かさを痛いほどわかっている長坂氏だからこその言葉だろう。
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