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「伏兵」さえも恐るべし。
城所龍磨の爆発に見るソフトバンクの競争原理

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Kyodo News

 今年のセ・パ交流戦でMVPに輝いたのは、福岡ソフトバンクホークスの城所龍磨(きどころ・りゅうま)だった。打率.415で首位打者に輝き、さらに5本塁打、12打点、6盗塁(盗塁死0)と、文句なしの初受賞となった。

セ・パ交流戦のMVPに輝いたソフトバンクの城所龍磨セ・パ交流戦のMVPに輝いたソフトバンクの城所龍磨

 失礼を承知で言わせてもらえば、城所がこんな大活躍をするとは、正直、夢にも思わなかった。苦節13年目。昨年まで一軍は通算589試合に出場しているが、おもに"守備固め"と"代走"のスペシャリストという役回り。打席に立つ回数も決して多くはなく、これまで通算48安打で、本塁打は2007年に放った1本のみだった。一方で、三振はヒットの倍以上の105個を喫していた。

 ただ、溢れんばかりの才能の持ち主であることは知っていた。城所は、今となっては少なくなったダイエー時代を知る選手だ。当時のチームを率いていた王貞治監督が「ウチの若手では一番遠くに飛ばすチカラがある」と、腕組みをして目を細めながら打球を追っていたのをよく覚えている。

 しかし、プレーが"軽い"という印象だった。打撃ではスイングは強いが工夫が見られない。守備は強肩だが、ただ思いっきり投げるだけで精度が低かった。振り返れば、デビュー戦は代走出場だったが、打球が当たってしまいアウトになった。抜群すぎる能力を生かしきれない、もったいない選手だな、とずっと感じていた。

 それが、この大変身だ。やはり挫折を乗り越えた人間は一回りも二回りも逞しくなるものなのだろう。

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