田中将大から則本昂大へ受け継がれた「1勝への執念」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 チームメイトも則本を支える。同点の6回には、ライトの松井稼頭央がホームを狙ったランナーをワンバウンドの送球で刺した。7回には後藤光尊が勝ち越しのタイムリーを放ち、サンチェスの犠牲フライでさらに1点を加える。則本が6回2失点でマウンドを降りた後は、福山博之、青山浩二、松井裕樹とブルペン陣が無失点でつないで、2点のリードを守り切った。9回にはセンターに入っていたルーキー、福田将儀があわやという大飛球をフェンスに激突しながらつかみ取るというファインプレーもあった。

 ようやくつかみ取った、2015年の初勝利――その喜びとこの日までの苦しさは、ハイタッチを交わす則本の苦笑いが物語る。試合後、則本は言った。

「やっと、ですね。たぶんファンの方よりも僕が一番、待ってました。開幕からなかなか勝てなくて長い期間でしたけど、今日、ようやく1勝できました。でも、今日は自分のピッチングができませんでしたし、課題だらけですからこの数時間だけ喜んで、反省してやれたらいいと思います」

 3年続けて開幕を託されたピッチャーでも、3試合勝てないとその時間を長く感じ、ひとつ勝っても喜びに浸る間もない。以前、則本がこんな話をしていたことがあった。

「基本的に僕、投げた日は興奮覚めやらぬせいか、あまり寝られないんです。そうするとその日に出てきた課題のことで頭がいっぱいになる。勝っても負けても課題は出てきますから、それを次の日のジョグで整理します。なぜこうなったのか、なぜあそこでイメージ通りの球が投げられなかったのかと、あれこれ考えながら走る。気づくと、30分は経ってますね」

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