2012.05.14

【プロ野球】9失点の理由。
室内ブルペンの落とし穴にハマッた斎藤佑樹

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

5月12日の西武戦、2回途中9失点で降板した斎藤佑樹 5月12日の函館劇場、幕間を挟んでの第2幕――その主役を務めたのは、涌井秀章だった。開幕投手を務めながら調子が上がらず、いったん二軍落ち。一軍に復帰後は、ライオンズのクローザーを任されている。

  9回裏、得点は9-5でライオンズが4点をリードしていた。ゼロに抑えても涌井にセーブはつかない局面だったが、一時は9-1と大きくリードしながら7回に2点、8回に2点と追い上げてきていたファイターズの勢いを断ち切るために、ライオンズは敢えてクローザーをマウンドへ送った。

  ところが、万全の構えを敷いたはずだったライオンズの切り札が、ファイターズ打線に捕まる。先頭の小谷野栄一からひとつのフォアボールを挟んで稲葉篤紀のツーベースヒットまで、怒濤の3連打を浴び、9-8となって、あっという間の1点差。なおも涌井はワンアウト満塁と、8点差のゲームを同点にされてしまうかもしれない大ピンチを背負うこととなった。

 もし同点になれば、ファイターズの先発ピッチャーの負けが消える。

  よもや、1、2回のわずか2イニングで9点も失った先発ピッチャーに負けがつかないなんてことがあったら、”持ってる、持ってる”の大合唱が始まったことだろう。何しろ9点も失ったのは、幕間を挟む前、第1幕のほうの主役を演じたもうひとりの開幕投手、斎藤佑樹だったのだから……。

 それにしても、この日は寒かった。

 聞けばこの日、北海道沖の低気圧のせいでオホーツク海側では16年ぶりの遅い積雪を記録したのだとか。しかも気温が低いだけではなく、風の通り道として知られる函館オーシャンスタジアムでのゲームである。

 1回表のマウンドに立った斎藤は、想像以上の強風に戸惑っていた。北北東から吹く強風は、ピッチャーにとっては強烈な向かい風となる。正午の風速は秒速9メートル、気温は12度。 試合開始の時点では陽光が完全に雲に遮(さえぎ)られており、グラウンドを吹き抜ける風がさらに勢いを増しているとなれば、体感温度は零度に近かったということになる。いつもの試合前の遠投では、斎藤のバランスは悪くなかった。いや、むしろ、いいバランスで投げているようにさえ見えた。しかし、マウンドの上で向かい風に晒(さら)されていた斎藤は、今までの斎藤ではなかった。