【プロ野球】9失点の理由。室内ブルペンの落とし穴にハマッた斎藤佑樹 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

「……難しいですね、あそこから立て直すのは……」

 わずか4球。

 されど4球。

 立て直すのが難しいとまで感じさせたこの4球に、この日の斎藤の苦悩が垣間見えていた。

 最大の誤算はマウンドに立ったときの違和感だった。マウンドに立った感じが、ブルペンとはあまりに違っていたのだ。斎藤自身は「マリンで投げる予定だったのがズレただけですから(10日の先発予定が荒天で中止)、風が強いのは変わらないんで……」と強風を言い訳にはしなかったが、吉井理人ピッチングコーチがこう明かした。

「ブルペンとマウンドの環境があまりに違いすぎたね。室内は風もないし……(斎藤の)調子はよかったと思うよ」

  函館オーシャンスタジアムのブルペンはグラウンドの一、三塁の両側にある他、室内にもある。ライオンズの先発、石井一久は外のブルペンで、しかも半袖のアンダーシャツを着て、試合前のピッチングを行なっていた。斎藤は室内のブルペンでピッチング練習を済ませ、いつものように外のファウルゾーンに出て、遠投による最後の調整を済ませていた。そこで斎藤は、改めて強風を体感することになる。球筋を確認してゲームに臨む最後の遠投で、ボールが思うよりも風に流されるのを感じたのだ。そしてゲームが始まるや、立て続けに4球もボールを思うように操ることができず、斎藤は焦った。これまで2球投げればストライクがひとつは取れるという1-1ピッチを徹底することで優位に立ってきたピッチャーが、2球投げて2球ともボール、また2球投げて2球ともボールでは、何かが狂っていると思ってしまっても不思議ではない。

  斎藤は1回、栗山を歩かせた後、満塁のピンチで6番のエステバン・ヘルマンにインコースへのストレートを、詰まりながらもライト前へ運ばれてしまい、まず2点を失った。さらに7番の大崎雄太朗にも高めのストレートをライト前に弾き返され、さらに2失点。2回はショートの飯山裕志が跳ねる打球を捕り損ね、ライトの糸井嘉男も強風に判断を誤るという、名手のエラーが続いた。しかもここで秋山にライトオーバーのスリーベースヒットを打たれてしまい、またも4失点。最後はせっかく捕ったピッチャーゴロを斎藤自身がサードへ悪送球して、9点目。流れを止められない斎藤に、さすがの栗山英樹監督も重い腰を上げざるを得なかった。

「守りのミスがなければ2回の斎藤はスッといったかもしれないけど、でも、軸になるピッチャーはああいうときこそ、みんなを守ってあげないといけないよね。踏ん張れるピッチャーなんだから……何点とられても5回までは投げさせようと思っていたんだけど、(斎藤の)サードへの悪送球を見て、頭が真っ白になっているように見えたから、2回途中だったけど交代させた。今日はダメなピッチングだったけど、こういうこともあるんだと考えて、肥やしにしてほしいと思ってます」

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