大谷翔平のコメントから見て取れる「二刀流でサイ・ヤング賞獲得」への本気度とWBCへの強い思い (3ページ目)
【「27歳ピーク説」のMLBの通説を破り続ける大谷の進化】
選手としてのピークをどう感じているのかと問われると、大谷はこう答えた。
「トレーニングの反応や体の状態を考えると、今がピークあたりなのかなとは思っています。ただ、このままオフシーズンをどう過ごすかで、どこまで持っていけるかは変わってくると思います」
MLBには、「27歳ピーク説」と呼ばれる通説がある。セイバーメトリクスの研究によって、WAR(*1)やwRC+(*2)、OPS+(*3)、FIP(*4)といった指標を大量の選手データで平均化すると、野手の総合的なピークは26〜29歳に集中するという結果が示されてきた。スカウトの目から見ても、身体能力は20代前半から半ば、打撃の完成度は20代後半から30代前半が最も高いとされている。投手も同様で、球速のピークは20代半ばに訪れ、年齢とともに故障リスクは高まっていく。だからこそ、多くの選手は30代に入ると「維持」を最優先する。
*1=打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標/*2=打者が1打席あたりにどれだけ得点に貢献したかを示す指標/*3=打者の得点力を測る指標/*4=投手自身の能力=「奪三振・与四死球・被本塁打」のみで投手の失点リスクを評価する指標
しかし大谷は、その枠組みから外れている。27歳で初めてMVPに選ばれ、翌年にはサイ・ヤング賞投票で4位。30歳で50本塁打・50盗塁という前例のない領域に踏み込み、31歳の今もなお、球速と投球内容の両面で進化を示している。
大谷は「今がピークあたりなのかな」と語った。だが彼が更新しているのは、単なる自己記録ではない。年齢によって規定されてきたはずの「ピーク」という概念そのものである。スポーツにおけるピークとは、年齢が与えるものではなく、挑戦によって引き延ばされ、書き換えられるものなのだ――。大谷翔平は、そのことを世界最高峰の舞台で、静かに、しかし決定的に証明し続けている。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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