【大谷翔平】ドジャース打撃コーチが語る「2ストライク後のアプローチ」に見る一番打者としての技術&心理的変化 (3ページ目)
【確立しつつある一番打者としての"大谷流"】
もっとも、この試合で問題に気づいたのは監督だけではなかった。チームリーダーのミゲル・ロハスは「今日のスイングの多くは出塁を意識したものではなかった。カウント序盤から長打を狙いすぎていた。それを(コルテスに)突かれた」と反省し、試合後には選手同士でアプローチについて話し合ったという。
ロバーツ監督も「投手のゲームプランに対抗するには、打線も意図をもって対抗しなければならない。スイングを短くしなければならない場面もあるし、それはできるはず。実際にやっている選手もいる。ただしチーム全体としては徹底できていない」と語った。その一方で、この日のクラブハウスには前向きな兆しがあったと感じたという。
「選手たちは試合後に正しいことを言っていた。我々は"自分たちらしさ"を取り戻し、泥臭く戦い、得点をもぎ取る方法を探す。その意欲は必ず形になると信じています」
言葉どおり、チームは8月24日から4連勝を飾り、4試合で26得点と打線が復調した。大谷もその4試合で16打数3安打、3四球、1本塁打、3得点と、確実にチームに貢献している。
シーズン全体を通して見ても、一番打者大谷のアプローチは進化している。初球を振る確率は2024年の39.6%から32.5%へと下がり、ボールをよく見るようになった。ボール球に手を出す割合も26.6%から25.6%に改善。昨年はシーズン途中から一番打者に回ったが、今年はここまで121試合で一番、10試合で二番と、リードオフマンの役割が板についてきた。大谷は常にチームを第一に考え、自らのプレースタイルを順応させる。今後も首脳陣の意図に応じ、ボール球を追いかける傾向がさらに減り、2ストライク時のアプローチもより洗練されていくのだろう。
ベイツ打撃コーチもこう語る。
「翔平は本当に几帳面で、自分の打撃を熟知しています。ですから新しいことを一から教える必要はありません。ときどき『2ストライクではこの投手はこう攻めてくるから、こういう意識でラインドライブを狙ってみてはどうか』とリマインドする程度で十分なんです。それはフレディ(・フリーマン)やムーキー(・ベッツ)も同じ。どんな打者でも、小さなことを思い出させる必要がある。翔平も例外ではありません。大げさなプレゼンのような指導ではなく、ほんの小さな助言で、彼自身が修正し、アジャストできるんです」
勝負の9月、そして10月、一番打者・大谷翔平はさらに進化を遂げていく。
著者プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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