【大谷翔平】実力者が次々と戻ってきたドジャース先発投手陣 2年連続世界一への「ドリームシナリオ」 (2ページ目)
【「これが、私たちが"思い描いていた姿"だ」】
「毎晩、しっかりした先発投手がいれば、試合を作ってくれて、勝つチャンスが高くなると感じられる。ローテが整っていると"この試合は取れる"って気持ちで入れるし、それがチーム全体のメンタルにもよい影響を与える」
ロバーツ監督のそんな見方はあまりにも正しい。ローテーションが安定していれば、チームの大崩れはなくなり、心の拠り所にもなる。頻繁にブルペンゲームを行なっても勝ちきれることは示されてきてはいるが、それでも長いイニングを投げられる投手が豊富なことに越したことはない。
「私たちはいいチームだ。去年はワールドシリーズを勝ったわけだけど、去年よりもいいチームだと思っている。シーズンはまだたっぷり残っているし、みんなが健康を取り戻せば、投手陣も勢いに乗れる。そうしたら、いいベースボールができるようになるさ」
主力野手のひとりであるテオスカー・ヘルナンデスが、"Better than last year(昨季よりもいいチーム)"と自信を持つ理由がどこにあるのかは誰の目にも明白だ。今季も結局は故障者続出に苦しむことにはなったが、"向上の理由"であるはずの先発投手たちがひとり、またひとりと戻ってきている。
8月1日以降、カーショウ(タンパベイ・レイズ戦で6回無失点)、スネル(同5回3失点)、山本(同6回途中まで無失点)、グラスノー(カージナルス戦で7回1失点)、シーハン(同5回無失点)がすべて好投した姿を見て、ファンは勇気づけられていることだろう。ドジャースの選手たちも心強く感じているに違いない。
もちろんここで今季初めて頭数が揃ったからといって、もう順風満帆だと言いたいわけではない。いくつかの不確定要素が頭に浮かんでくる。
酷暑のなかでの登板となった7月終盤のシンシナティ・レッズ戦で緊急降板した大谷は、これから目論みどおりにイニングを増やしていけるのか。右肩のインピンジメント症候群で負傷者リストしている佐々木は何らかの形で貢献できるのか。山本以外はすべて故障上がりの先発投手たちは今後、健康体を保てるのか。
ただし、それらの疑問符を考慮したうえでも、投手陣がいい方向に向かっているのは間違いないはずである。
「これが、私たちが"思い描いていた姿"だ。ここに至るまでの道のりは決して一直線じゃなかったけど、8月に入った今、ようやくチームが"本来あるべき姿"に近づいてきた」
ロバーツ監督はそう述べ、シーズン終盤に向けて静かな自信をアピールしていた。打線はまだエンジン全開とは言えずとも、今秋のカギはビッグネームぞろいの先発ピッチャーたちが握っている。
順調にいった場合、ローテーションを狭めるプレーオフでは数人をリリーフに回し、ブルペンの層を厚くすることも可能となる。2023年のWBCのように、本当に重要なゲーム限定であれば大谷を抑えで使うことだってできるかもしれない。そういった"ドリームシナリオ"の向こう側に、メジャーではめっきり難しくなった2年連続世界一という夢が見えてくるに違いない。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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